米海軍特殊部隊「チーム6」、極秘北朝鮮浸透作戦に失敗か – NYT報道

米同時多発テロ事件の首謀者ウサマ・ビンラディンを殺害したことで知られる、米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)の最精鋭「チーム6」が、6年前に北朝鮮への極秘浸透作戦に投入されていたと報じられ、国際社会に波紋を広げています。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は5日(現地時間)、複数の元・現米当局者の証言を引用し、トランプ政権下で実行されたこの作戦が金正恩国務委員長の盗聴を目的としたものであったと伝えました。

「チーム6」の極秘北朝鮮浸透作戦の全貌

NYTの報道によると、この極秘作戦はトランプ政権1期目の2019年初めに実施されました。その目的は、北朝鮮の最高指導者である金正恩国務委員長の意図を把握するため、電子装備を設置することでした。作戦は、2018年6月のシンガポール首脳会談と2019年2月のベトナム・ハノイ首脳会談という米朝高官級交渉の狭間に行われたと推定されます。

統合特殊作戦コマンド(JSOC)は、米朝高官級交渉が行われた2018年秋、当時のドナルド・トランプ大統領から作戦の承認を受け、北朝鮮浸透の準備に着手しました。「北朝鮮がさらに予測不可能になった状況で、金正恩国務委員長の考えを把握することがトランプ政権の最優先課題だった」とNYTは指摘し、この作戦の背景にある緊迫した米朝関係を浮き彫りにしています。

チーム6は闇夜の中、小型潜水艦を用いて北朝鮮の海岸に到着することに成功しました。しかし、そこで予期せぬ事態が発生します。民間人を乗せた北朝鮮の船舶が突然現れ、海岸に待機していた小型潜水艦の近くに懐中電灯を照らしながら接近したのです。チーム6は発覚を懸念し、乗組員らを射殺したとNYTは伝えています。作戦プロトコルに従い、チーム6は装備の設置を断念し、直ちに撤収を余儀なくされました。

モチーフはビンラディン殺害作戦、米海軍特殊部隊「チーム6」の活動を描いた映画の一場面モチーフはビンラディン殺害作戦、米海軍特殊部隊「チーム6」の活動を描いた映画の一場面

過去の成功事例と作戦の背景

今回の作戦は失敗に終わりましたが、ネイビーシールズは過去にも北朝鮮への浸透作戦を成功させた前例がありました。ジョージ・W・ブッシュ元大統領の在任中である2005年にも、小型潜水艦を使った同様の作戦が成功裏に完了しています。この成功体験が、トランプ政権が再びこのような危険な任務を承認する一因となった可能性も考えられます。

報道の波紋と法的問題

NYTは、トランプ政権1期目の政府関係者や元・現役軍人など、総勢24人への詳細なインタビューを通じて、この極秘とされる「金正恩盗聴作戦」の全容を明らかにしたと報じています。しかし、この報道は新たな法的問題を提起しています。NYTは、「トランプ政権が議会の所管委員会にも作戦調査結果を全く知らせなかった」と指摘し、これが「連邦法に違反した可能性もある」と伝えています。ホワイトハウスは、この作戦に関する言及を拒否しています。

結論

米海軍特殊部隊「チーム6」による金正恩盗聴を目的とした北朝鮮浸透作戦の失敗は、米朝関係の緊張と、水面下で行われる情報戦の熾烈さを改めて浮き彫りにしました。特に、議会への報告義務違反の可能性が指摘されることは、今後の情報機関の監視と透明性に関する議論に大きな影響を与える可能性があります。この極秘作戦の詳細は、引き続き国際社会の注目を集めることでしょう。

参考文献