韓国チョンセ市場、保証強化で新たな危機か?政府の住宅担保比率引き下げ検討が波紋

韓国のビラ(低層住宅)を中心とした全国のチョンセ(敷金一括前払い型賃貸)市場が、再び深刻な危機に直面しています。政府がチョンセ保証金返還保証の加入条件をさらに厳格化する検討を進めており、これが実現すれば、既存の多くの契約が保証対象から外れる恐れがあるため、市場に大きな波紋を広げています。今回の政策変更は、賃貸人、借主双方に重い負担を強いる可能性が指摘されており、その動向が注目されています。

住宅担保比率(LTV)引き下げの具体案

現在、住宅都市保証公社(HUG)と韓国住宅金融公社(HF)の基準では、住宅価格を公示価格の140%として認定しています。これにより、保証金が公示価格の126%までであれば、保証に加入することが可能です。しかし、政府が検討している新たな基準では、住宅担保比率(LTV)を現行の90%から70〜80%に引き下げる方針であり、保証金は実質的に公示価格の98%を上限とする案が浮上しています。この見直しは、2023年に「住宅価格の90%以内」と強化されたばかりの条件を、さらに厳しくするものです。

ソウル市内のチョンセ保証金問題が深刻化する低層住宅(ビラ)密集地域ソウル市内のチョンセ保証金問題が深刻化する低層住宅(ビラ)密集地域

市場の懸念と家主・借主への影響

国土交通省が保証加入条件の住宅担保比率(LTV)をさらに引き下げる案を検討していることに対し、既に90%に引き下げた時点で市場に大きな衝撃があったという声が多く聞かれます。これを受けて、韓国賃貸人連合会は最近、ソウル・汝矣島で大規模な反対集会を開催し、懸念を表明しました。保証基準の強化は、家主にとって既存の入居者に保証金を返却し、新たな契約を結ぶために数千万ウォン(日本円で数百万円)の追加資金が必要になることを意味します。特に、ビラなど非アパート市場は直接的な打撃を受けやすく、政府が掲げる「庶民の住宅安定」と「保証制度強化」という大義名分が、かえって家主と借主の双方に重い負担を強いる結果となると懸念されています。

政策の目的と予期せぬ副作用

政府は今回の政策について、チョンセ詐欺の防止とHUGの財政健全化を主な目的としています。しかし、2023年5月に保証加入基準を90%に強化したにもかかわらず、チョンセ詐欺被害は依然として続いており、被害者への支援が遅れているケースも少なくありません。HUGの利用規約が被害者に不利に適用され、公正取引委員会から是正勧告を受けた例もあるなど、制度運用面での課題も浮き彫りになっています。また、保証強化の副作用として、外国資本や大手企業の賃貸市場参入が加速する現象が見られます。保証金返還の負担に苦しむ既存の中小家主に代わり、大規模資本を持つ外資系や大手不動産会社が市場シェアを拡大しており、中小型家主の競争力低下が懸念される状況です。

まとめ

韓国政府によるチョンセ保証金返還保証条件のさらなる厳格化は、チョンセ市場、特にビラ市場に深刻な影響を及ぼす可能性があります。政府の目的はチョンセ詐欺防止とHUGの財政健全化にありますが、その一方で、既存の家主や借主に新たな経済的負担を強いることや、市場の構造変化を招くという副作用も指摘されています。業界関係者らは、今後の政策において、中小家主の保護強化、保証金比率の段階的調整、地域ごとの柔軟な適用など、よりきめ細やかな対策が不可欠であると提言しています。

参考文献