民泊仲介大手エアビーアンドビー(Airbnb)は、10月16日から未申告の宿泊施設を全面的にプラットフォームから削除する方針を発表しました。これは「不法」という汚名を返上し、韓国社会との信頼構築を目指すものですが、3000万人にも迫る外国人観光客時代を前に、宿泊インフラの深刻な空白が現実化する懸念が高まっています。
Airbnbの「不法」返上と大規模撤退の懸念
エアビーアンドビーは韓国メディア向け説明会で、これまで登録済みだった宿泊施設に対しても営業申告義務を全面適用すると明言しました。これにより、申告を行わない施設はプラットフォームから削除されます。現在、韓国内に登録されている約7万3000件の宿泊施設のうち、7〜9割が未申告と推定されており、この措置は大量の施設退場につながる可能性があります。
韓国ソウルの北村韓屋村を訪れる外国人観光客。民泊規制強化による宿泊インフラの変化が注目されている。
他国事例に見る宿泊供給の激減と影響
過去の事例を見ると、同様の規制強化が宿泊供給に大きな影響を与えてきました。2018年に「新民泊法」が施行された日本では、エアビーアンドビーの物件数が6万2000件から1万3800件へと約80%急減し、予約の大半がキャンセルされました。また、2023年のニューヨークでも短期賃貸物件が92%減少し、ホテル価格が7%以上高騰する事態となりました。これらの事例に照らすと、韓国でも宿泊施設の供給不足が発生し、観光産業に悪影響を及ぼす恐れがあります。
Airbnbの韓国社会への貢献とカントリーマネージャーの声明
エアビーアンドビー・コリアのカントリーマネージャーであるソ・ガヨン氏は、今回の決定について「苦しい決断だが、韓国社会と信頼を築くために自ら踏み切った」と強調しています。同氏は、供給減は避けられないとしながらも、「長期的には健全な制度が共有宿泊を支える基盤になる」との見解を示しました。同社によると、2024年には韓国国内総生産(GDP)に5兆9000億ウォンの貢献が見込まれ、8万4500人の雇用を支えました。ゲスト支出も宿泊費以外に交通・外食・買い物などで6兆3000億ウォンに達し、そのうち24%は非首都圏で発生するなど、地域経済への貢献も大きいです。
韓国の民泊制度が抱える課題
一方で、韓国の宿泊業に関する既存制度は、現代のニーズや実情と大きく乖離しているという指摘があります。宿泊業が27業種に細分化されている上、特に外国人観光客を対象とした「外国人観光都市民泊業」には、「実居住義務」「ワンルーム・オフィステル不可」「内国人宿泊禁止」といった厳しい制約が課されています。これにより、新規ホストの参入が困難であり、合法的な宿泊施設の供給拡大も容易ではありません。
結論
エアビーアンドビーによる未申告施設の大量退出は、韓国の宿泊インフラに大きな影響を与えることが予想されます。短期的な供給不足やそれに伴うホテル価格の高騰は、外国人観光客の誘致に水を差す可能性も秘めています。長期的に健全な民泊市場を形成するためには、Airbnbと韓国社会の信頼構築に加え、現実と乖離した現行の宿泊業関連制度の抜本的な見直しが不可欠と言えるでしょう。
KOREA WAVE/AFPBB News