新車購入時、フロアマットと並んで当たり前のように勧められ、見積書に記載されることが多いサイドバイザー(ドアバイザー)。その必要性については疑問の声も聞かれる中で、装着率が依然として高いという現状があります。喫煙率が減少し、カーエアコンの性能も飛躍的に向上した現代において、なぜサイドバイザーは「人気のオプション」であり続けているのでしょうか。本記事では、その理由と背景を深掘りします。
サイドバイザーが「必須」とされた古き良き時代の車社会
サイドバイザーが広く普及した背景には、「雨の日に窓を少しだけ開けられる」という実用性が大きく影響していました。昭和から平成初期にかけては、車内での喫煙がごく一般的であり、雨や雪の日でも換気のために窓を開ける必要があったのです。
さらに、当時のカーエアコンは性能が十分ではなく、中にはエアコンが装備されていない車両も珍しくありませんでした。そのため、一年を通して窓を開けて換気や温度調整を行う機会が多く、サイドバイザーは快適な車内環境を保つ上で欠かせない存在だったと言えるでしょう。
時代は変化したが、なぜサイドバイザーの人気は衰えないのか?
しかし、現代の状況は大きく変化しています。喫煙者の数は大幅に減少し、平成元年に男性喫煙率が5割を超えていたのに対し、令和元年には3割を切るまでになりました。車内での喫煙習慣も薄れ、換気目的での窓開けの必要性は減少しています。
また、カーエアコンの進化も目覚ましく、軽自動車でもフルオートエアコンが標準装備されるなど、快適な温度・湿度管理が当たり前になりました。これにより、雨の日に換気のために窓を開けるという機会は格段に減ったはずです。
雨の日に窓を少し開けても雨滴が入るのを防ぐサイドバイザーが装着された黒い乗用車
にもかかわらず、多くのディーラー営業マンの体感では、サイドバイザーの装着率は依然として7割から8割と、ほとんど減少していません。この数字は、従来の理由とは異なる新たな価値がサイドバイザーに見出されていることを示唆しています。考えられる理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 無意識の習慣と安心感: 新車購入時のオプションとして定着しているため、「とりあえず付けておく」という心理が働きやすい。
- 実用性の再評価: たとえエアコンが効いていても、車内のこもった空気や臭いを一時的に換気したい際に、雨を気にせず少し窓を開けられる利便性は大きい。特に、暑い日の駐車後に素早く車内の熱気を排出する際にも役立ちます。
- 静音性の向上: 高速走行時や強風下で窓を少し開ける場合でも、サイドバイザーが風の巻き込みや不快な風切り音を軽減する効果があると言われています。
- デザイン性への影響: 車体のサイドラインを整え、外観に一体感やアクセントを加えるドレスアップ効果を評価するユーザーもいます。
- プライバシー保護と日差し対策: わずかながら車内への視線を遮り、強い日差しが直接差し込むのを和らげる効果も期待できます。
これらの複合的な要因が、現代においてもサイドバイザーの高い装着率を支えていると考えられます。
まとめ
サイドバイザーは、かつての喫煙習慣やカーエアコン性能の課題から生まれた「必須アイテム」でしたが、時代が移り変わり、その主要な装着理由は薄れてきました。しかし、現代のユーザーは、雨天時の換気、車内の熱気排出、風切り音の軽減、さらにはデザイン性といった多様な側面からその価値を再評価し、「あると便利」なオプションとして選び続けているようです。新車購入を検討する際には、こうした隠れた実用性も考慮に入れると良いでしょう。
参考文献
- ベストカーWeb (Best Car Web)
- Yahoo!ニュース (Yahoo! News)
- [画像ギャラリー] 空調設備が進化しても換気は必要!そんな時に助けてくれるサイドバイザー!(4枚) (参照元)