90年代後半、人気バラエティ番組「進め!電波少年」のヒッチハイク企画で一世を風靡したお笑いコンビ「猿岩石」。そのツッコミ担当であった森脇和成氏は、相方・有吉弘行氏の大ブレイクとは対照的に、芸能界引退、サラリーマン生活を経て、現在は舞台役者として新たな道を歩んでいます。様々な経験を積み重ねてきた森脇氏が、今、舞台の上でどのような想いを胸に邁進しているのか、その背景と現在の活動に迫ります。
転身のきっかけと劇団への所属
猿岩石として社会現象を巻き起こした後、森脇氏は突然芸能界を引退し、サパークラブ経営、さらにはサラリーマンへと異色のキャリアを歩んできました。しかし、ある後輩からの誘いをきっかけに観劇した舞台が、彼の運命を大きく変えます。それが現在の所属劇団「ノーティーボーイズ」との出会いでした。驚くべきことに、猿岩石として「電波少年」の収録に向かう直前、森脇氏は当時の劇団主催者・中島氏と劇場で偶然にも顔を合わせていたといいます。中島氏は、当時まだ素人同然だった森脇氏の姿をテレビで見て覚えており、その後、舞台「畳屋バラッド」の主役としてオファーを受けることになります。商店街の古い畳屋が地上げ屋と戦うというこの作品での演技は、森脇氏に大きな手応えと演じる喜びをもたらし、「この劇団に入りたい!」という強い決意を抱かせました。そして2021年、彼は正式に劇団員として新たなスタートを切ったのです。
集英社オンラインのロゴ。元猿岩石・森脇和成氏の舞台俳優転身に関する独占インタビュー記事を示すサムネイル。
芸人時代の経験が活きる演技論
今年7月には、コメディタッチでありながら予想外の結末が待つ舞台「騙っちゅーの!」で、詐欺師の黒幕役を見事に演じきりました。その演技力の根底には、やはり芸人時代のコント経験が深く根付いています。猿岩石として活動を始めた当初から、有吉氏がネタを書き、森脇氏が共に立ち稽古を行うというスタイルでコントを作り上げてきた二人。2人で笑いながらネタを練り上げる作業は、今思えば脚本、演出、出演を兼ねる行為でした。この経験が、芸人であろうと役者であろうと、「役を演じる」という点において、深く通じるものがあるという森脇氏の演技論の基礎となっています。彼にとって、コントを通じて培われた表現力は、舞台上での役作りに不可欠な要素となっているのです。
役作りの独自手法と舞台での「ツッコミ」
役を作り込む上で森脇氏が心がけているのは、「この役を誰が演じたら合うか」を想像し、その役者を頭の中で「トレース」するという独自の視点です。これは単なるモノマネではなく、その役者を憑依させ、自分の中にイメージを落とし込んでいく作業だと言います。80ページにも及ぶ台本を覚えるためには、この「憑依」の感覚が欠かせません。また、7月の舞台で見せたアドリブや、コミカルかつ鋭い「ツッコミ」も印象的でした。彼は、役に入り込んでいればセリフを噛んでしまっても問題ないと考えています。日常生活でも噛むことはあり、それをどうカバーするかが勝負だと捉え、終盤で共演者の役名を間違えた際も、アドリブで見事に乗り切ったといいます。現在、13人いる劇団員はボケ役が多く、ツッコミができるのは森脇氏しかいないため、「ツッコミの人材不足」と冗談めかして語る一面も、彼の多才な才能を示しています。
森脇和成氏の舞台役者としての道のりは、過去の経験を糧に新たな表現の形を追求する、まさに挑戦の連続です。芸人として培った洞察力と表現力が、舞台という場でさらに深く花開いている彼の今後の活躍から目が離せません。
参考資料
- 集英社オンライン. (n.d.). 90年代社会現象を巻き起こした元猿岩石・森脇和成が舞台役者として再出発する理由. Yahoo!ニュースより引用.
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7c988948a24176cc9c0577ccfadf8377eb86bad