猛暑が続く中、「令和のコメ騒動」と呼ばれる食料問題が深刻化しています。石破茂首相はコメの増産を表明しましたが、一方でJAが生産者に支払う概算金は過去最高を記録する地域もあり、農家の期待と不安が交錯しています。こうした状況に対し、2022年から実家の農業を継いだ元バレーボール日本代表の中垣内祐一氏が「日本のコメ作りは本当に瀬戸際まで来ている」と警鐘を鳴らしています。生産現場で一体何が起きているのでしょうか。
日本の農業経営を圧迫する現実:小泉進次郎農相への批判
中垣内氏は、日本の農業が直面する厳しい現実について、当時の小泉進次郎農相の発言を例に挙げながら、その危機感を訴えています。
現場を知らない渇水対策への疑問
小泉農相が渇水対策として給水車の派遣を提案したことに対し、中垣内氏は「なんというか……またいつもの珍発言が始まったのかと思った」と厳しく批判。「現場を知らないにもほどがある。1枚の田に水を張るのにどれだけの量を必要とするのかを知っているのか。給水車で何とかなる話ではない」と述べ、実際の農業現場の状況が政策決定者に理解されていない現状を指摘しました。これは日本のコメ作りにおける水資源管理の重要性とその難しさを示すものです。
低迷する米価と農家の苦境
また、小泉農相が備蓄米を大量に放出し、「米の供給量をじゃぶじゃぶにする」と発言したことについても、中垣内氏は強く反発しています。世間では米価が高いことが悪のように思われがちですが、中垣内氏は「確かに米価を下げれば国民を納得させられ、選挙の票につながるかもしれない。ただ、それでは農家が困る」と指摘。諸経費が上がり続けているにもかかわらず、米価が長年低迷してきたことで、日本の農業経営は極めて厳しい状況に置かれていると訴えました。食料安保の観点からも、農家の経営安定化は喫緊の課題と言えます。
福井工業大学で体育を指導する中垣内祐一氏。元バレーボール日本代表として、農業経営者と大学教授の二足の草鞋を履く彼の専門性が、日本の米作り問題への深い洞察を裏付けています。
農業現場のリアル:諸経費の高騰とJAの課題
中垣内氏の農水省や政府に対する厳しい批判は、多岐にわたります。農業機械のコスト、肥料価格の高騰といった米作りに不可欠な諸経費の実態や、現在の農業経営の困難さ、さらにはJAにコメが集まらない構造的な理由など、現場の生の声が赤裸々に語られています。これは日本の食料自給率や食料危機に対する意識にも深く関わる問題であり、政府の政策立案において現場の意見がどれほど反映されているかが問われます。
中垣内氏が語った「小泉農相は現場を知らないにもほどがある」という発言の全容は、月刊「文藝春秋」2025年10月号(9月10日発売)および、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」(9月9日先行公開)に掲載されています。日本の米作りが直面する具体的な課題と、それに対する現場からの切実な声が、より詳細に描かれています。
結論:日本の食料生産を守るために
中垣内祐一氏の言葉は、日本の米作りの現状がいかに厳しいか、そして政府の農業政策が現場の現実と乖離している可能性を示唆しています。食料自給率の向上と安定した食料供給は、国家の安全保障において不可欠です。そのためには、単なる政治的アピールに終わらない、現場の声を真に聞き入れ、具体的な支援策と長期的なビジョンを持った農業政策が求められています。この「令和のコメ騒動」が、日本の農業、ひいては食料システム全体を見直す契機となることを期待します。
参考文献
- 文藝春秋 編集部, 文藝春秋 2025年10月号
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/be03852ae5d8f60ca5f998376aff21a36755e616