時代劇「帰郷」の挑戦(上) 初の8K時代劇 世界に照準

[ad_1]



フランス・カンヌの市街を背景に、国際商品見本市「MIPCOM」のワールドプレミアとして上映された「帰郷」に出演した(左から)佐藤二朗、常盤貴子と杉田成道監督

フランス・カンヌの市街を背景に、国際商品見本市「MIPCOM」のワールドプレミアとして上映された「帰郷」に出演した(左から)佐藤二朗、常盤貴子と杉田成道監督

死生観や祈りテーマ、高評価

 日本映画放送が運営する「時代劇専門チャンネル」が制作した時代劇「帰郷」が、来年1月17日から劇場などで期間限定上映された後、2月8日にスカパー!などの同チャンネルで放送される。従来の時代劇と異なり世界市場で販売することを目指し、さらに時代劇としては世界で初めて、超高精細な8K撮影を行った。その“衝撃”を追う。(兼松康)

 「フランスまで来て、こうして私たちの作品を見ていただけるのは光栄。いかがでしたでしょうか」

 日本映画放送社長で、「北の国から」など数々の名ドラマの演出家として知られる杉田成道(しげみち)監督の言葉に大きな拍手が湧き起こった。10月中旬に仏カンヌで開催された、テレビ番組などコンテンツの国際商品見本市「MIPCOM」での一幕。「帰郷」はここで、アジア作品として初の「ワールドプレミア」として上映された。

 主演・仲代達矢の娘、おくみ役で出演した常盤貴子は「想像していた以上に見た人が喜んでくれた。(上映後の)パーティーでも、いろんな人がいかに良かったかという感想を聞かせてくれて。感動を私たちに伝えたいほどに、シンパシーを感じてくれていた」と語った。渡世人の栄次役で出演した佐藤二朗も「すごくいいものを作れば海を越える。遠慮しないで世界と戦おうということ」と、海外での手応えを口にした。

 杉田監督は「死生観や救い、贖罪(しょくざい)といった西洋的なテーマに近い内容で、インパクトがあったようだ」と満足げな表情を見せた。

 「日本のマーケットがシュリンク(萎縮)する今、世界に目を向けないといけないという思いがどこかにあったんですよ」

 こう明かすのは、同社の執行役員編成制作局長で、「帰郷」では、企画・プロデュースを務めた宮川朋之氏だ。

 時代劇専門チャンネルは平成10年放送開始。開局から20年を超え、現在は800万世帯超の加入者がいるが、少子高齢化に伴う人口減少による影響は避けて通れない。

 ただ、高齢化は日本だけの問題ではない。巨大な人口を抱える中国などでも急速に進んでいる。そこで宮川氏は若年層ではなく、あえて高齢者に目を向けた。「50歳を過ぎたら時代劇を見るようになる面が少なからずある。日本の70~90歳が将来減少しても、世界をターゲットにすれば制作費をまかなうことができる」との思いに至ったという。

 「帰郷」は、MIPCOMの今年のテーマの一つに「4K8K映像」があったことから、超高精細の8Kでの制作を決定。さらに、世界的巨匠である黒澤明監督作品にも出演した俳優、仲代の主演という条件もクリアした。

 「忍者モノ」のような世界に向けた戦略的なコンテンツもある一方で、「帰郷」については「逆。むしろ、今まで(時代劇で)やってきたことを丁寧に掘り下げる」との考えだ。死生観や祈りといったテーマの方が「世界につながり、通用する」との判断があったという。

 近年は世界的に「コスチューム・ドラマ」と呼ばれる時代物のドラマが人気となっていることも、「帰郷」が世界に打って出る背景となっている。「(現代ドラマよりも)時代劇のほうが人間と人間の葛藤や感情の幅を出しやすい。ドラマというフィクションの世界を作りやすく、表現の幅も広がる」と宮川氏。日本の時代劇が世界に羽ばたく時代が来ている。

【あらすじ】「帰郷」 原作は藤沢周平の小説「又蔵の火」(文春文庫)に収められている短編。故郷の信州・木曽福島に向かう男、宇之吉(仲代達矢)は、かつて博奕打ちだったが、親分の罪をかぶり、江戸に身を寄せて30年がたっていた。帰った故郷で源太(緒形直人)という男を追い詰めていたのは、宇之吉のかつての兄貴分、九蔵(中村敦夫)の手下だった。渡世人仲間の栄次(佐藤二朗)と行った飲み屋で出会ったおくみ(常盤貴子)は、源太と好いた仲だが、かねておくみに目をつけていた九蔵に源太が斬りつけ、追われる身となっていた…。

[ad_2]

Source link