日本の強制送還が急増:在日クルド人や日本生まれの子どもたちも標的に、「ゼロプラン」の波紋

今夏以降、日本における外国人の強制送還が著しく増加しており、特に難民申請中の人々や不安定な在留資格を持つ人々がその対象となっています。出入国在留管理庁(入管)が今年5月に発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」がこの動きを加速させているとみられ、支援団体からは「異常事態」との強い危機感が表明されています。日本で生まれ育った子どもまでが送還される事例も報告されており、人道的な観点から大きな問題提起がされています。

強制送還急増の背景:「不法滞在者ゼロプラン」の影響

入管による強制送還が今夏から急増している背景には、政府が推し進める「不法滞在者ゼロプラン」があります。このプランは、日本の安全と安心を確保するという名目のもと、不法滞在者の数を減少させることを目標としています。しかし、難民申請中であるにもかかわらず在留資格が不安定な状態に置かれている外国人や、特定の事由により在留特別許可を求める人々までが、この政策によって強制送還の対象となっているのが現状です。これにより、長年日本で生活してきた人々が突然故郷へ送還されるという、深刻な人権問題が浮上しています。

入管の不透明な対応と具体的な事案

このような状況を受け、一般社団法人反貧困ネットワークは8月27日、参議院議員会館で外国人の子どもたちの強制送還中止を求める集会を開催しました。この集会において、参加した国会議員らがゼロプラン導入以降の正確な送還者数を開示するよう入管に再三求めましたが、「統計がない」「個別の事案に関しては回答を控える」といった紋切り型の対応に終始し、具体的な数字は公表されませんでした。昨年6月から約半年間の送還者数が19人であったことと対照的に、ゼロプラン後の数字が明らかにされないことは、透明性の欠如として批判されています。

在日外国人の強制送還停止を求める集会後、参議院議員会館前で抗議スタンディングを行う支援者たち在日外国人の強制送還停止を求める集会後、参議院議員会館前で抗議スタンディングを行う支援者たち

具体的な事案としては、埼玉県の支援団体「在日クルド人と共に」によると、ゼロプラン発表以降、約30人近くのクルド人が送還されたとされています。この中には、日本で生まれ育った小学生の女児も含まれており、彼女たちが言葉や文化の異なる見知らぬ土地へ送られることの精神的負担は計り知れません。また、パニック障害と診断され、在留特別許可を求めて裁判中だったネパール人男性が強制送還された事例も明らかになっています。これらの事例は、強制送還が単なる法的手続きではなく、個人の人生と人権に深く関わる問題であることを浮き彫りにしています。

長期的な視点での抗議活動の重要性

1980年代から外国人労働者問題に深く関わってきた77歳の日本人男性は、現在の状況に対し、「国会で追及できても入管の動きを止めるのは容易ではない。強制送還は今後さらに増えるだろう」と危機感を表明しています。しかし、「指をくわえて見ているわけにはいかない。長期的な視野に立ち、『こんな行ないは許さない』と声をあげていくべきだ」と訴え、継続的な市民社会からの監視と抗議の重要性を強調しました。この発言は、現状を放置せず、粘り強く人権擁護の声を上げ続けることの必要性を示唆しています。

結び

日本における外国人の強制送還が急増している現状は、国際社会における日本の人権意識と外国人政策のあり方を問う深刻な問題です。「不法滞在者ゼロプラン」の名のもとに、難民申請者や日本生まれの子どもたちまでが送還の対象となる異常な事態に対し、社会全体でその背景と影響を深く理解し、人道的な解決策を模索する声がこれまで以上に求められています。この問題は、単に外国人に限定されるものではなく、共生社会を目指す日本の未来像にも影響を与えるものです。