日本の医療費高騰が止まらない:高齢化が「現役世代」に重くのしかかる構造問題

日本における医療費の増加は深刻な課題となっています。2024年度の概算医療費は4年連続で過去最高を更新し、その総額は48兆円に達しました。これは、より詳細な統計である国民医療費の約98%に相当します。この医療費増加は、国内総生産(GDP)に占める割合が過去最大の8.24%を記録するなど、日本経済全体に大きな影響を与えています。

国民医療費の急増とその背景

最新の国民医療費は2022年度で46兆6967億円に上り、10年前の2012年度の7.85%、20年前の2002年度の5.91%と比較しても、国民経済に占める医療費の割合が著しく増大していることが明らかです。この医療費高騰の最大の要因は、急速に進む高齢化にあります。

高齢者が医療費の大部分を占める現状

概算医療費の内訳を見ると、75歳以上の高齢者が全体の40.8%(2024年度)を占めており、2021年度の38.6%からさらに上昇しています。高齢者は疾病罹患率が高いだけでなく、終末期医療に多額の費用がかかるという構造的な問題を抱えています。2024年度の概算医療費の伸び率は全体で1.5%でしたが、75歳以上に限ると4.1%と大幅な増加を見せました。一人当たりの年間医療費では、75歳未満が25万4000円に対し、75歳以上は97万4000円と、その差は4倍近くにもなります。

医療相談する高齢者と若者:日本の増大する医療費問題医療相談する高齢者と若者:日本の増大する医療費問題

現役世代への深刻な負担:健康保険料の圧迫

この増大する医療費の負担は、健康保険料として現役世代に重くのしかかっています。企業で働く人々が企業と折半して支払う健康保険料は、2025年度には年間平均54万4143円に達しています。これは、全国の健康保険組合が加入する健康保険組合連合会の調査によるもので、給与の9.34%が保険料に充てられている計算になります。

名目賃金上昇が引き起こす保険料増

物価高騰に対応するための賃上げが行われていますが、健康保険料は給与に対する保険料率で決まるため、名目給与が増えれば保険料も自動的に増えます。実質賃金が増えていない状況でも保険料が上昇するため、現役世代の負担感は一層深刻化しています。10年前の2015年度の年間保険料は平均48万4336円だったため、約6万円も増加したことになります。

後期高齢者医療制度への拠出金問題と赤字組合

特に、2008年度以降、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度を支えるために、現役世代が支払う保険料から毎年多額の拠出金が支払われています。この拠出金が健康保険料を押し上げる主要因の一つであり、健康保険組合の支出の約4割を占めています。その結果、全国の健康保険組合の48%にあたる660組合が赤字決算に陥るという厳しい状況に直面しています。

日本の医療費高騰高齢化は、もはや避けて通れない国家的な課題です。増大する医療費は現役世代の家計を圧迫し、持続可能な社会保障制度の維持を困難にしています。今後、医療提供体制の効率化、予防医療の推進、そして世代間の公平性を考慮した財源確保の議論が、より一層喫緊の課題として求められるでしょう。

参考資料