昨年3月にお笑いコンビ「尼神インター」を解散し、15年間所属した吉本興業を退所した誠子(36)。当初は仕事ゼロ、収入半減という厳しい現実に直面しながらも、「全然苦しくない」と語る彼女の表情は明るい。誠子は自身の人生において、フリーの道こそが「フルスイングの大きなチャレンジ」であると捉えており、その挑戦に対する揺るぎない思いと現在の活動について詳しく話を聞いた。
吉本興業退所後、フリーランスとして新たな道を歩むお笑い芸人・誠子
「壁にぶつかった時こそチャレンジ」吉本退所の決断
コンビ解散という大きな転機を経験した後、誠子はさらなる大きな決断を下した。それは、15年間在籍し多くの恩義を感じていた吉本興業を辞め、フリーランスとして活動するという、まさに挑戦的な一歩だった。彼女は「自分の人生において、壁にぶつかった時や試練だと感じた時には、必ずチャレンジをする」と決めているという。
吉本興業からは何度も引き止めがあり、マネージャーたちとのミーティングも重ねられた。誠子にとって吉本は「実家ぐらい好きな場所で、大好きな人が集まる場所」だったため、彼らが「本当にチャレンジするにしても、吉本でやったらいいやん」と優しく声をかけるたび、彼女の気持ちは何度も揺らいだという。しかし最終的には、自身の強い意志で決断。新宿の本社で顔を合わせれば気持ちが揺らぐと考え、最後は自宅からマネージャーにメールで「辞めます」と連絡したそうだ。
ゼロからのスタート:「誠子食堂」など自ら仕事を創出
吉本を辞めることには100%の不安があったと誠子は振り返る。仕事がなくなることは確実だったからだ。その言葉通り、フリーになった直後、彼女の仕事は完全にゼロになった。「本当に『やばい』ってなりましたよ」と語る誠子がまず取り組んだのは、何かを始めることだった。最初に始めたのは、資金ゼロで開設できるSpotifyのラジオ番組だった。吉本にいた頃に毎日ステージで話す練習をさせてもらっていた経験を活かし、その練習を続けたいという思いからスタートしたという。
仕事が全くない状態を経験したことで、「仕事がなかったら自分で作るんや」という大切な学びを得た。自身の資金を使ってライブを企画したり、「誠子食堂」のような食のイベントを企画・運営したりと、積極的に活動を展開していく。当然、最初から全てがうまくいくわけではなく、赤字になることもあった。しかし、そこから「こういうやり方をしたら赤字になるんだ」という教訓を得て、次は何とかプラスに転じさせようと、お金や運営について学び、徐々に利益を出せるようになったという。
収入半減でも得られた「心の豊かさ」
収入面では、吉本に所属していた最盛期と比較すると、現在は半分程度だという。吉本時代は舞台出演の機会も多く、一日に何本もの仕事があったが、今は仕事の数自体が減少した。それでも誠子は「全然苦しくないですね」と笑顔で語る。その理由として、収入を「回している」という感覚があることを挙げた。「例えば、収入があったとしても、これを次のライブの資金にしようという考え方に今はなっています」。
何よりも大きいのは、心の豊かさが増したことだという。仕事の数が減った分、一つひとつの仕事に、以前よりも深くやりがいと思いを込めて取り組めるようになったと感じている。吉本にいた頃ももちろん楽しかったが、今はフリーという環境でしか得られない楽しさや、新たな悩みも経験しているそうだ。
良好な関係を保つ吉本興業と新たな活動
吉本を辞めた寂しさは確かにあると語る誠子。19歳で吉本に入所して以来、毎日吉本の芸人仲間と顔を合わせていたため、大好きな芸人に毎日会えない現状は純粋に寂しい気持ちもあるという。しかし、会社とは現在も良好な関係を保っている。前のマネージャーには分からないことを聞いたり、プライベートで食事に行ったりすることもあるそうだ。誠子の主催ライブには吉本の芸人に出演してもらうこともあれば、誠子自身が吉本のライブに出ることもあり、退所後もこのように友好的な関係が続いているのは珍しいケースだという。
現在の誠子の活動は多岐にわたる。芸人としてのメディアやライブ出演に加え、2023年10月にはライフスタイルブランド「merci(メルシー)」を共同で立ち上げた。また、「誠子食堂」に関するイベントを全国各地で開催するなど、精力的に活動の幅を広げている。誠子が自身のキャリアを「フルスイングの大きなチャレンジ」と表現するように、彼女は着実にその歩みを進めている。
誠子 プロフィール
誠子(せいこ):1988年、兵庫県出身。2007年、NSC大阪で同期だった渚と「尼神インター」を結成。2024年3月末にコンビを解散し、吉本興業を退所。現在はフリーの芸人として活躍する傍ら、「誠子食堂」などの料理イベントやライフスタイルブランド「merci」のプロデュースなど、幅広い分野で活動している。
結論
誠子の吉本興業退所とフリーランスへの転身は、単なるキャリアチェンジに留まらない「人生の大きなチャレンジ」を象徴する出来事です。収入が半減しても「苦しくない」と言い切る彼女の言葉からは、経済的な豊かさよりも精神的な充足感、そして自らの手で道を切り開くことの喜びと覚悟が伝わってきます。吉本との良好な関係を保ちつつ、新たなブランド立ち上げや食のイベントなど、多角的に活動を展開する誠子の姿勢は、多くの人々に勇気と示唆を与えるでしょう。彼女の今後の「フルスイング」な活躍に、引き続き注目が集まります。
参考資料
- 記事出典: デイリー新潮 (新潮社)
- 関連シリーズ: 本記事は「元・尼神インター誠子が語る激動のキャリア(全4回)」の第1回です。