レバノンのデモで60人負傷 政治抗争も激化、組閣進まず





レバノンの首都ベイルートで、治安部隊が打ち込んだ催涙弾を蹴飛ばすデモ参加者=15日(AP)

 【カイロ=佐藤貴生】経済悪化に反発するデモが続くレバノンの首都ベイルートで15日、前日に引き続きデモ隊と治安部隊が衝突し、ロイター通信によると60人が負傷した。10月中旬にデモが起きて以来最大規模の衝突とみられる。デモの混乱を引き金とする各政治勢力の権力闘争も激化しており、新内閣樹立も進まない状況だ。

 同国では10月下旬、デモを受けてイスラム教スンニ派のハリリ首相が辞任した。だが、アウン大統領らが後継選出のために各政治勢力との間で進めていた協議が難航し、ハリリ氏が再指名される公算が高まっている。同国ではスンニ派が首相に就くのが慣例。

 サウジアラビアなどを後ろ盾とする同氏は、続投の条件として実務家中心の内閣樹立を主張。これに対し、国会で大きな勢力を持つイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は「すべての勢力が団結して危機に対処すべきだ」などと述べ、「実務家中心」の名の下で特定の宗派が排除されることへの警戒をあらわにした。

 治安部隊は15日、ベイルートに集結した数千人のデモ隊に催涙弾を発射するなどして鎮圧に当たった。レバノンでは財政危機が深刻化し、国民の3分の1は貧困ライン以下の暮らしを強いられているとされる。

 デモによる混乱が政治の機能不全と経済悪化に拍車をかけ、デモがさらに長期化する悪循環に陥っており、事態の収束は見通せない状況だ。



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