伊東市、前市長失職の余波:今度は市議会議長にも政治資金疑惑が浮上か

静岡県伊東市では、学歴詐称疑惑に絡み田久保眞紀前市長(55)が強制失職するという前代未聞の事態が発生しました。市議会が不信任決議を突きつけ、混乱に終止符が打たれたかに見えましたが、ここにきて新たな問題が浮上しています。前市長を追及する側にいた市議会議長に対し、不透明な政治資金処理疑惑が持ち上がり、伊東市政の真の正常化にはなお時間がかかりそうです。この疑惑は、公金を扱う機関の透明性に対する市民の信頼を揺るがしかねない重大な問題として注目されています。

前伊東市長・田久保眞紀氏が失職直後の様子、伊東市政の混乱を示す一枚前伊東市長・田久保眞紀氏が失職直後の様子、伊東市政の混乱を示す一枚

「届け出のない団体」への不透明な交付金10万円

疑惑の核心にいるのは、前市長への2度目の不信任決議案が採択される直前に議長に再選された中島弘道氏(65)です。中島氏は、田久保氏が「東洋大学の卒業証書」と称するものを「19.2秒」にわたって提示したと主張し、市議会が田久保氏を偽証罪などで告発する際の中心人物でした。

しかし、その中島氏が代表を務めていた自民党伊東市支部が2023年5月15日、「中島弘道後援会」に対し10万円の交付金を支出していたことが問題視されています。この後援会は、政治団体としての届け出がない「任意団体」でした。政治資金規正法では、政治団体ではない任意団体への寄付は禁止されています。

さらに、同年9月に行われた市議選の選挙運動費用収支報告書において、中島氏は5月15日に自民党伊東市支部から公認料として10万円の寄付を受け取ったと記載しています。この事実は、支部が「後援会」に支払ったと報告する一方で、中島氏個人が受け取ったと主張するという矛盾を生み出しています。日本ニュース24時間では、自民党伊東市支部の収支報告書などでこれらの記載を確認しています。

専門家が指摘する法的な問題点

政治資金に詳しく、自民党の裏金問題を解明してきた神戸学院大学の上脇博之教授は、この件について次のように指摘しています。

上脇教授によれば、もし中島市議が個人で寄付を受け取ったと主張している場合、自民党伊東市支部が後援会に支出したと収支報告書に記載していることは、政治資金規正法における「虚偽記入」に該当する可能性が高いとのことです。虚偽記入は、政治資金の透明性を損なう重大な違反行為となります。

また、仮に受け取ったのが後援会であったとしても、政治団体としての届け出がない任意団体が支出を受け取ったことは、公職選挙法が禁止する「選挙区内にある者に対する寄付」とみなされる可能性があります。いずれのケースにおいても、法的な問題が避けられない状況であり、その実態解明が求められています。

伊東市政の正常化への道のり:続く課題

今回浮上した中島議長の政治資金疑惑は、田久保前市長の失職という大きな混乱を乗り越えようとする伊東市にとって、新たな試練となるでしょう。加えて、市議会内における唯一の「田久保派」市議も、代表を務める団体の運営で問題を抱えていると報じられており、伊東市政全体にわたる透明性と倫理観が問われる事態となっています。

前市長の失職は、確かに一つの区切りでした。しかし、市政の真の「正常化」とは、個人の責任追及に留まらず、政治資金の透明性、説明責任、そして市民の信頼回復といった根本的な課題に真摯に向き合うことによってのみ達成されるでしょう。伊東市は、今、その信頼を取り戻すための岐路に立たされています。

参考文献