11月、高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁への反発として、中国政府は自国民向けに日本への渡航自粛を呼びかける通知を行った。また中国の航空会社はこれに応じる形で、日本との間に就航していた定期便の16%にあたる約900便を減便した。
【渡航自粛の顕著な影響】
中国政府の要請は、国民にとっても「鶴の一声」となっている。上海市にある旅行会社のスタッフが明かす。
「現状はあくまで『自粛要請』ではありますが、公務員や政府と取引のある民間企業の社員の場合は渡航を見合わせざるをえず、事実上の渡航禁止です。それに該当しない人でも、今の時期は流石に『日本に観光に行って来ます』と大きな声では言えない雰囲気。
海外旅行の際はSNSで写真を投稿し、自慢するのが中国人の旅行スタイルですが、『それができないなら日本行きを諦めよう』という人もいます。政府による渡航自粛の呼びかけが始まって以来、日本行きの旅行商品の売れ行きは前年同期比で10%程度にとどまっています」(上海の旅行会社スタッフ)
こうした動きは、すでに日本の産業にも影響が波及している。都内で3軒の民泊施設を運営している男性は、青色吐息で話す。
「来年2月28日の春節を中心にその前後1週は、今年の夏の時点ですでに予約で埋まっていました。ところが、日本渡航自粛の呼びかけから1週間以内にすべての予約がキャンセルになりました」(民泊施設を運営する男性)
また公益財団法人大阪観光局も、11月27日の記者会見で、府内約20ホテルで、12月末までの中国人の宿泊予約のうち5割?7割にキャンセルが発生していることが判明したと発表している。
11月18日時点の野村総合研究所の試算では、中国政府の日本への渡航自粛要請で日本の経済損失は1.79兆円、GDPを0.29%押し下げるという結果も出ており、景気への影響も懸念されている。
【高まるオーバーツーリズム議論】
ところが、日本のSNSでは、
「習近平グッジョブ」「渡航自粛ではなく恒久的に禁止にしてほしい」
などと中国政府による渡航自粛要請を歓迎する声も上がっている。そうした投稿のほとんどは、日本各地で問題となっているオーバーツーリズムの緩和につながるとする見方が根底にあるようだ。






