かつて「憧れの別荘ライフ」を夢見て購入された土地が、所有者の死後、残された家族にとって「負動産」となり、深刻な相続トラブルを引き起こすケースが増えています。特にバブル経済期のリゾートブームで購入された土地の多くは、時間の経過とともに価値が下落し、管理費や固定資産税といった維持費だけが負担として残る「負の遺産」と化しています。本記事では、実際にあった事例をもとに、夢の別荘地がなぜ「負動産」となるのか、そしてそれが遺族にどのような悲劇をもたらすのかを詳述します。虎ノ門法律経済事務所横須賀支店の中村賢史郎弁護士の見解を交えながら、その実態に迫ります。
「まさか負動産に」那須高原の土地を相続した浩二さんの苦悩
東京都内に住む会社員の浩二さん(50歳・仮名)は、先日亡くなった父・幸雄さん(享年75歳・仮名)が残したある土地について、深く頭を悩ませています。「父が残したものが、まさかこれほど厄介な存在になるとは思いませんでした」と彼は語ります。幸雄さんが残したのは、栃木県・那須高原に位置する広大な120坪の土地でした。
バブル期の「憧れ」が時代とともに変化
幸雄さんは、安定した収入を得ていた1995年頃、この那須高原の土地を約400万円で購入しました。当時、那須高原エリアは新幹線の開通やバブル経済の後押しを受け、リゾート地として高い人気を誇っていました。坪単価約3万円という価格は、多くの会社員にとって手が届く「憧れ」であり、温泉の権利を購入すれば別荘内で温泉も楽しめるという魅力もありました。幸雄さんもまた、「いつかここに家族で過ごす別荘を建てる」と妻のよし子さん(72歳)に夢を語っていたといいます。
夢の別荘地が「負動産」となる相続問題を象徴するイメージしかし、その夢は実現することなく、別荘が建つことはありませんでした。幸雄さん夫婦は定年後も那須ではなく都内近郊のマンションに住み続け、この土地は手つかずのまま残されたのです。
残された家族への「負の遺産」
そして今、よし子さんと浩二さんの二人が、この「負動産」と化した那須高原の土地を相続することになりました。当初の購入価格が400万円だった土地は、現在では価値が大きく下落し、売却も困難な状況です。さらに、所有している間は毎年固定資産税や管理費などの維持費用がかかり、遺族にとっては経済的な負担がのしかかります。虎ノ門法律経済事務所横須賀支店の中村賢史郎弁護士は、このような相続トラブルが全国各地で頻発していると指摘します。夢で購入したはずの土地が、愛する家族にとっての重荷となる現実は、多くの教訓を含んでいます。
憧れの別荘地が、時代とともにその価値を失い、「負動産」として子世代に重い負担を強いるケースは決して珍しくありません。不動産の相続においては、単なる資産価値だけでなく、将来的な維持費や管理の手間、そして売却の可能性までを見越した慎重な計画が不可欠です。遺された家族が悲劇に見舞われないためにも、生前のうちに専門家と相談し、不動産の適切な処分方法や相続対策を検討することが、今や重要な課題となっています。





