昨今、生成AIの急速な普及に伴い、イラストレーターは「淘汰される職業」の一つとして挙げられることが多くなりました。特に、漫画やアニメ風のイラストは、品質にこだわらなければ、今や中学生や高校生でも生成AIを使って簡単に出力できる時代です。このような状況は、多くのイラストレーター、特に「かわいい女の子」をデジタルで描くことを得意とするクリエイターにとって大きな懸念材料となっています。「コミックマーケット(コミケ)での同人誌の売れ行きが落ちた」「10年前と比べて仕事の依頼が明らかに減った」と嘆く声も聞かれます。
しかし、このような厳しい時代にあっても、「稼げるイラストレーターは確実に稼いでいる」という実態があります。驚くべきは、彼らの多くがSNSのフォロワーがほとんどいなかったり、あるいはSNSを全く利用していなかったりと、世間的な知名度がほとんどないにもかかわらず、堅実に高収入を得ているという点です。本稿では、生成AI時代を生き抜くイラストレーターたちの知られざる実態に迫ります。
生成AIが代替しやすい「美少女イラスト」の現状
YouTubeでは、漫画・アニメ・ゲーム風の「イラストの描き方」をレクチャーする動画が数多く投稿されており、若い世代の間ではイラストレーターとは「漫画・アニメ風の絵を描く人」というイメージが定着しつつあります。しかし、まさにこうしたスタイルを得意とするイラストレーターほど、生成AIの影響を強く受け、収益の減少に直面しているのが現状です。
2000年代にライトノベルの挿絵を手がけていたあるイラストレーターは、「当時はイラストの依頼に加え、コミケで同人誌を頒布して利益を得ることができました。しかし、コミケの来場者数も減少し、私が描くようなイラストは生成AIで簡単に作成できるようになったため、完全にバブルは終わったと感じています」と語っています。
生成AIの普及とイラスト業界の現状を示す画像
SNSの「いいね」に頼らない専門性とニッチな需要
では、イラストレーター自体の需要がなくなったのかというと、決してそうではありません。実は、専門性が高く、特定のニッチなジャンルに特化して描くことで、「SNSでほとんど『いいね』がつかない」ようなイラストレーターの中に、高額の収入を得ているプロが存在します。むしろ、SNS上で「スター」として扱われていないイラストレーターの方が、手堅く安定して稼いでいる傾向が見受けられるのです。彼らは、一般的な人気や知名度よりも、特定の顧客のニーズに応える高い技術と専門知識を武器に、独自の市場を築いています。
このようなイラストレーターは、特定の業界や分野における専門的なイラストレーションの需要を満たしており、生成AIでは再現が難しい独特の表現力や知識が求められています。彼らの仕事は、単に「絵を描く」という行為に留まらず、クライアントの意図を深く理解し、その目的を達成するための視覚的なソリューションを提供するコンサルタントのような役割も果たしています。
AI時代におけるイラストレーターの新たな価値
生成AIの台頭は、イラストレーター業界に大きな変化をもたらしていますが、同時に新たな価値創造の機会も提供しています。主流の、あるいは模倣されやすいスタイルのイラストレーターが苦戦する一方で、高い専門性やニッチな市場に特化したクリエイターは、その独自のスキルセットと経験によって安定した収益を上げています。これは、AIでは代替できない人間ならではの創造性、特定の分野における深い知見、そしてクライアントとの密接なコミュニケーション能力が、今後のイラストレーターにとって不可欠な要素となることを示唆しています。SNSのフォロワー数といった表面的な人気に囚われず、真に価値ある専門性を追求することが、AI時代におけるイラストレーターの生存戦略と言えるでしょう。





