少子高齢化、経済力低下、円安、物価高……今は昔と違って日本は移住先として人気がないだろうと考えがちだ。しかし、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部部長の是川夕さんは「むしろ近年、日本は移住したい国ランキングの上位に入るようになり、しかも学歴や収入の高い層に人気がある」という――。
【図表】アジア諸国からの国際移住意向ランキング(地域別、2022-24年平均)
※本稿は、是川夕『ニッポンの移民――増え続ける外国人とどう向き合うか』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。
■移住意欲から見た日本の位置付け
日本はアジア地域においてすでに最大の受け入れ国であり、かつ日本への移住は送り出し国の経済水準が高い程活発になる。これは近年の円安などで日本が経済的優位性を急速に失いつつあるというメディアなどで見られる一般的なイメージと一致しない。これはいったいどういうことであろうか。
この点について、米国の著名なシンクタンクであるGallup社が世界140カ国以上で毎年実施する意識調査の結果を見ることで、潜在的な移住意欲から見た日本の位置づけを確認したい。
同調査は、調査対象国の国民に対して、「永住移住を希望するか」「そしてその際、理想的にはどの国に行くことを希望するか」という質問をしている。なお、移住先の国/地域は一つしか選べない。その結果を見ると、日本はデータがとれる2009年以降、アジア域内ではほぼ一貫して上位10位以内にランキングされており、かつその順位は2015年以降、上昇する傾向が見られる(図表1)。
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■米国はトランプ政権になり順位が低下
その結果、2021年には米国(1407万人)に次いで第2位(988万人)、2024年にはアラブ諸国(1757万人)、及び米国(1586万人)に次いで第3位(1374万人)となっている。
同年に日本に次ぐ人気を示すのが、カナダ(1261万人)、オーストラリア(1243万人)である。この2国はこれまでも強い人気があり、かつては日本の2倍程度の移住希望者がいた時もあったが、最近ではその差は縮まり、逆転している。
ランキング全体を見ると、米国が圧倒的に高かったものが、2016年に第一次トランプ政権が成立すると急速にその人気を低下させ、カナダ、オーストラリア、日本といった国々と接近した。
その後、バイデン政権になり回復したものの、2024年11月にトランプが当選したことで再び急激に人気が低下、ついに2009年からの調査期間中、第一次トランプ政権下の2018年に次いで2度目の首位からの転落を経験した。






