自然誌研究の長い歴史の大半を通じて、ヘビは孤独なニッチを占めると考えられてきた。誰もが知っているように、ヘビは獲物を待ち伏せ、絞め殺し、飲み込み、消化し、これを繰り返して生きている。そして言うまでもなく、ヘビはこれらすべてを単独でやっている。ヘビの社会的相互作用は極めてまれであり、あったとしても、短期間かつ実利的なものに限られる。交尾、特定の季節の集団形成、母親と子ヘビの同居といったものだ。
こうした前提を踏まえると、ヘビが集団で狩りをする、それも各個体がリアルタイムで他個体から手がかりを得つつ、戦略的に行動を協調させるなどという発想は、まったくあり得ないものに思える。ずっと以前から、こうした行動はほぼ完全に、大きな脳を持ち、集団のダイナミクスが種の生態の根幹をなすような肉食動物──オオカミ、シャチ、ライオンなど──に限られるというのが定説だった。
ところが2017年、キューバの洞窟に分け入ったある生物学者は、ヘビの1種が、これまでどんな爬虫類でも一切観察されたことのない行動を示すところを目撃した。
■初めて観察された「ヘビの協同狩猟」
生物学者ウラディミール・ディネッツが2017年、学術誌『Animal Behavior and Cognition』に掲載した論文は、小規模ながら実に驚くべきもので、ヘビの能力に関する私たちの思い込みを根底から覆した。
この研究の主役は、カリブ海の島々の在来種で絞め殺し型の狩りをする大型(体長2~3m)のヘビ、キューバボア(学名:Chilabothrus angulifer)だ。ディネッツは論文のなかで、9匹のキューバボアが、まるでオオカミの群れのように、行動協調に基づく狩りをする様子を詳述した。
みなさんの多くは、9匹のボアは、ただ同じ場所で同じ時間に狩りをしていただけだろうとか、大量の食料を分け合っただけでは戦略的協力とは言えないと思ったのではないだろうか。しかし9匹のボアは、実際に極めて戦略的な協力行動を示した。彼らは、すでに狩り場に陣取っていた他個体の位置に基づいて、自身の待機場所を調整したのだ。
ディネッツの記述によれば、8夜にわたる観察期間中、洞窟の開口部に最初に到着したボアは、壁面や天井部の亀裂に身を潜めた。奇妙なことに、そのあとにやってきた2匹目のボアは、1匹目の隣に陣取った。時には、最初の個体と同じ角度でポーズを取ることさえあった。3匹目、4匹目と、その後に洞窟に到着した個体も、同様の行動を示した。
最終的に、9匹のボアは事実上、洞窟の入口を自分たちの体で封鎖した。そして、彼らは待った──コウモリが通過するのを。
驚くことに、彼らの戦略は見事に成果を上げた。単独の場合、ボアはしばしば狩りに失敗した。けれども、このように緩やかな空間的連携を取ることで、ボアの集団は、ずっと高い確率でコウモリを捕食したのだ。これは、複数のヘビによる封鎖が、互い違いに設置された車止めのように作用し、洞窟の外へ向かって高速飛行するコウモリの群れには回避できなかったためと考えられる。






