金融資産に焦点:マイナンバー活用で高齢者医療費負担は公平化へ

高市早苗首相が年頭記者会見で「給付付き税額控除」の国民会議立ち上げを表明する中、政府は高齢者の医療費負担に金融所得を反映させる方針を打ち出し、大きな注目を集めています。これは、マイナンバー制度を活用して金融資産を把握し、「公平・公正な社会の実現」を目指す動きの一環であり、日本の所得格差問題とも深く関連しています。

高齢者医療費負担における「応能負担」の強化

政府は2025年11月21日に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」において、「医療費の窓口負担について、年齢にかかわらず公平な応能負担を実現するための第一歩として、高齢者の窓口負担割合等に金融所得を反映する」と明記しました。この方針は、75歳以上の後期高齢者医療制度における保険料や窓口負担に、株式の配当や債券の利子といった金融所得を反映させることを目的としています。

これまで、後期高齢者医療制度の保険料は前年の総所得に基づいて市町村が算定してきましたが、株式配当などの金融所得は確定申告をしなければ算定対象にならず、申告の有無で負担が異なるという不公平が指摘されていました。厚生労働省によると、後期高齢者の医療費のうち約4割が現役世代の保険料で賄われている現状から、裕福な高齢者に「応能負担」を求めることで、現役世代の社会保険料負担を軽減する狙いがあります。

マイナンバーによる金融所得把握の仕組みと課題

金融所得の把握方法としては、証券会社が国税庁に提出する所得情報を自治体が活用する仕組みが想定されています。しかし、この導入には、オンライン提出の義務化、マイナンバーの付番徹底、データベースの整備、そして自治体のシステム改修など、いくつかの課題があり、実際の導入までには数年を要すると見られています。

行政システム総研顧問・蓼科情報主任研究員の榎並利博氏は、この期間が必要であることについて、年間合計所得30億円以上の超富裕層に対するミニマムタックス導入にも時間がかかった例を挙げながら、「その程度の期間は要するかもしれません」と述べています。しかし同氏は、証券口座へのマイナンバー付番が2016年から義務づけられており、取引のある口座については株式の配当所得や譲渡益などを「かなり把握できると思います」と、制度の実現可能性に言及しています。

高市早苗氏の記者会見の様子高市早苗氏の記者会見の様子

マイナンバー制度の本来の目的と所得格差是正

榎並氏は、マイナンバー制度が「公平・公正な社会の実現」を第一の目的としていると強調し、「マイナンバーが本来の目的のために役立つ段階に来ているというのが私の実感です」と語っています。総務省のホームページにも、マイナンバー制度により「国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります」と明記されています。

現在、日本でも富裕層と貧困層の間で所得格差が広がり、「ジニ係数」は上昇傾向にあります。厚生労働省の調査では、過去最大の所得格差が示されており、税や社会保障による再分配機能は働いているものの、これをさらに強化していかなければ、格差は拡大し社会不安が増すばかりになる可能性があります。金融資産の把握を通じた応能負担の強化は、このような所得再分配機能を強化し、社会の公平性を高める重要な一歩となり得るでしょう。

結論

高齢者の医療費負担に金融所得を反映させる政府の方針は、マイナンバー制度を活用した「公平・公正な社会の実現」に向けた具体的な動きです。この取り組みは、不公平感を解消し、現役世代の負担を軽減するとともに、拡大する所得格差の是正にも寄与すると期待されます。導入には課題も伴いますが、金融資産の透明化は、持続可能な社会保障制度の構築と社会不安の軽減に不可欠な要素と言えるでしょう。今後の制度設計と進展に、引き続き注目が集まります。