世界を席巻する日本の抹茶ブーム:高騰と品薄の裏側

日本の伝統的な飲み物である「抹茶」が今、世界中で爆発的なブームを巻き起こしています。その影響は、ティー文化の本場である京都・宇治の日本茶専門店にまで及び、開店前から数万円クラスの高級抹茶を買い求める外国人観光客が長蛇の列を作る光景が見られるほどです。海外では抹茶が通常価格の何倍もの高値で転売されるケースも頻繁に報告されており、この前代未聞の需要拡大に、日本の産地では抹茶の製造が追いつかず、深刻な品薄状態に陥っています。まるで争奪戦のような騒ぎが世界各地で繰り広げられているのです。

コロナ禍明けから加速する抹茶人気

抹茶の世界的な流行は、コロナ禍が明けた約3年前から顕著になりました。背景には、世界中で「ティー道(茶道)」をはじめとする日本の伝統文化や美学への関心が高まっていることがあります。加えて、鮮やかなグリーンがスイーツなどに使用されることで「SNS映え」する点も、その人気を加速させる大きな要因となりました。

さらに、カテキンやテアニンといった豊富な抗酸化成分が含まれていることから、健康志向の強い欧米人の間で「スーパーフード」として注目され始めたことも、抹茶の需要を押し上げる要因となっています。現在では、中東の富裕層も抹茶に夢中になるなど、その熱狂は世界中に広がりを見せています。

日本では特別な機会にしか飲まれないことが多かった抹茶ですが、海外での消費が急増した結果、2024年の緑茶輸出額は約364億円という驚異的な数字を記録しました(前年比約25%増)。この緑茶輸出量8798トンのうち、過半数が抹茶であるとされており、これが価格暴騰に直結しています。

京都で高級抹茶を買い求める外国人観光客の行列京都で高級抹茶を買い求める外国人観光客の行列

異常な輸出額と価格の暴騰

世界的な需要の急増は、抹茶の価格に甚大な影響を与えています。2025年の京都の抹茶(てん茶)の平均仕入れ価格は、前年の2.7倍にまで跳ね上がりました。抹茶価格が最も低迷したコロナ禍と比較すると、その価格は約4倍にまで高騰している計算になります。

日本人が日常的に玉露やほうじ茶、番茶など様々なお茶を楽しむ一方で、外国人にとっては茶殻が出るタイプのお茶は扱いが面倒に感じられることが多いようです。そのため、手軽に楽しめる抹茶に需要が集中し、他の日本茶との間で需要の偏りが生じているのが現状です。

供給不足と産地の対策、そして新たな競争

日本の茶舗では、この異常な需要と供給のバランスの崩れに対応するため、一人あたりの購入数を制限したり、普段から取引のない新規の注文を断ったりするなど、様々な対策を講じています。しかし、需要は依然として高く、商品はすぐに売り切れ、価格も高騰し続けています。このままの状態が続けば、日本国内で純粋な日本の抹茶の入手が困難になる可能性も指摘されています。

さらに、この状況に目をつけた動きも出てきています。中国の貴州省では、「第二の宇治」を目指し、抹茶生産に力を入れ始める動きがあると言われています。これは、ティー道の偉大なマスターである千利休も驚くような、日本の抹茶文化が直面する新たな競争と挑戦の始まりと言えるでしょう。

結論

世界的な抹茶ブームは、日本の伝統文化の国際的な評価を高める一方で、国内市場における供給と価格に大きな課題をもたらしています。健康志向、SNS文化、そして日本文化への関心の高まりが複合的に作用し、抹茶は単なる飲み物から世界の注目を集める「スーパーフード」へと変貌を遂げました。このブームが持続する中で、日本がどのようにして伝統と品質を守りながら、国際的な需要に応え、新たな競争に対応していくのかが、今後の重要な焦点となるでしょう。

参考文献