日本の軽音「シティ・ポップ」じわり“逆輸入” 伊藤銀次「原点回帰」





シティ・ポップに“原点回帰”した作品を発表した伊藤銀次=東京都文京区(石井健撮影)

 「シティ・ポップ」と呼ばれる日本の軽音楽が、海外の音楽マニアに注目されている。流行の主流というわけではないが、日本でもベテランのミュージシャンがシティ・ポップ回帰をうたった新作を出すなど、じわじわと“逆輸入”され始めた。(石井健)

 東京・JR新宿駅横のタワーレコード新宿店は、シティ・ポップのCDをそろえたコーナーを大きく展開している。

 「約2年前から、シティ・ポップのCDを求める訪日客が増えました。爆買いするアジア系の方も」と話すのは、フロアの責任者、田中学さん(48)だ。

 シティ・ポップに明確な定義はないが、主に洋楽の影響を受け、かつ洗練されて都会的な日本の軽音楽を指す。山下達郎(66)や竹内まりや(64)、大貫妙子(66)らが代表で、同店でも売れ筋だ。

 わざわざ来店するのは、インターネットで配信されていないなど、海外から入手困難な作品も少なくないからだ。この半年で中高年の日本人客も増えた。「海外で人気と聞いて、日本人が再認識している」と田中さん。タワーレコードは11月、シティ・ポップの楽曲を集めた独自編集のCDを発売した。

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 音楽ジャーナリストの柴那典(とものり)さん(43)によると、海外でのシティ・ポップ人気は、2018年に動画投稿サイトで竹内の「プラスティック・ラブ」が注目されたことが発端。00年代後半、米国でAOR(大人向けロック)を再評価していた音楽マニアが、魅力的な楽曲を競って探すうちに、この動画に出合った。

 「彼らには、シティ・ポップはAORの秘境に思えたのでしょう」と柴さん。彼らが次々とシティ・ポップを掘り起こし、ネットを通じて世界中の音楽マニアに知られていった。

 米国では今年5月、山下の「FRAGILE」を引用した曲を収めたヒップホップのアルバムがチャートの首位を獲得。引用の“元ネタ”の宝庫としても注目されているという。

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