日本銀行は27日、今月18、19日に開いた金融政策決定会合の「主な意見」を公表し、邦銀が口座管理費用の一部を預金者に転嫁する「口座維持手数料」を導入した場合、超低金利による「資産利回り低下の影響が、借り入れに伴う負債コスト低下の効果を上回る可能性がある」と懸念する声が上がったことが分かった。国民が大規模金融緩和の負の側面に着目し金融政策への批判が高まることを警戒する姿勢が垣間見える。
口座維持手数料は、欧米の金融機関では一般的に導入されている。12月会合では、ある政策委員がドイツで法人に加え個人の大口預金にも口座維持手数料を課す動きや、手数料の引き上げが進んだことを紹介し、「国民経済への影響を含め状況を注視していく必要がある」と警鐘を鳴らした。
銀行預金よりも相対的に収益率が高い株式投資ができる人が優位になり、「所得格差が拡大する可能性もある」との指摘もあった。
邦銀が口座維持手数料の導入を探るのは、日銀が民間銀行から資金を預かる際に手数料を取る「マイナス金利」で収益力が低下し、マネーロンダリング(資金洗浄)対策などで上昇する口座の維持管理費が経営の重荷になった背景がある。
最大手の三菱UFJ銀行では長期間稼働していない口座から年1200円の手数料を取る案が浮上した。三井住友銀行やみずほ銀行も、手数料体系全体を見直す過程で研究する構えだ。
日銀の大規模緩和はこれまで円高是正や借り入れコストの低下など景気を刺激する側面が注目されてきたが、銀行の負担が手数料を通じて国民に跳ね返れば、批判的な声が強まる可能性もある。欧州中央銀行(ECB)が9月にマイナス金利を拡大する中、日銀は今年1年を追加緩和なしで乗り切ったが、令和2年の政策運営はこうした風向きの変化にも影響されそうだ。