来年1月1日に日米貿易協定が発効し、米国産品の関税が削減や撤廃されることに伴い、安価な食品の輸入が期待できる。関税引き下げは牛肉や豚肉、カリフォルニア産ワインなどなじみ深い食品が多い。さっそくスーパー大手のイオンが牛肉のセールを検討するなど、家計には恩恵となりそうだ。一方で、日本の畜産農家は米国産との厳しい競争にさらされる。
米国産の牛肉の関税は、38・5%から発効後に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の加盟国の水準と同じ26・6%に下がり、15年目に9%となる。
イオンは来年1月以降、日米貿易協定を受けた米国産牛肉の還元セールを計画する。また、外食チェーンなどで提供されるヒレ肉の値段が下がることも期待できる。ただ、牛丼チェーンの吉野家は調達する牛肉の全量が米国産だが、「商社を通じ仕入れており、価格はコントロールできない。(関税が下がって)すぐに安くなると楽観的には見ていない」とし、発効後の値下げに慎重な姿勢だ。
ワインの関税は15%から発効後に8・5%に下がり7年目に撤廃となるため、日本で人気のカリフォルニア産ワインなどの値下げも期待できる。ブドウ産地の天候不良が原因で世界全体で生産量が減るなどしてワインの蔵出し価格が高騰しているが、協定発効を記念したキャンペーンを計画しているスーパーは多い。
関税引き下げや撤廃は、米国向け輸出にも追い風となる。日本産牛肉は、200トン分に認められていた1キロ当たり約5円の低関税枠が事実上、拡大される。しょうゆも現在3%の関税が段階的に引き下げられ、5年目に撤廃される。工業品では、エアコン部品やメガネなどの関税が即時撤廃される。
一方、国内農家にとっては脅威だ。農林水産省は協定発効に伴う農産品の国内生産額が年間で600~1100億円減少すると試算。生産減少額は牛肉が237億~474億円、チーズなどの乳製品が161億~246億円、豚肉が109億~217億円、オレンジなどのかんきつ類が19億~39億円と見積もった。
これに加え、すでに発効しているTPPも含めれば影響額は全体で1200億~2千億円としており、国内農家への対策が急務となっている。政府は、肉牛の飼養頭数が一定未満の場合、繁殖雌牛の導入に一定金額を補助するなど国内農家を支援する方針だ。(飯田耕司)
https://www.sankei.com/economy/news/191228/ecn1912280009-n1.html