1万3千人もの犠牲者を出したウクライナ東部の紛争をどう終結させるか。重要なのは、ロシアの侵略行為がなければこの紛争は起き得なかったということである。
今月、フランスとドイツが仲介するウクライナとロシアの首脳会談が約3年ぶりに行われた。
双方は、年内に全戦闘地域での停戦を実現し、全ての捕虜を交換することで合意した。29日に捕虜の解放が始まったが、武装勢力が実効支配する地域の扱いでは前進がなく、和平の道筋はまだ見えてこない。
ウクライナ東部紛争は2014年3月、ロシアが同国南部クリミア半島を併合したのに続いて勃発した。ロシアの支援を受ける東部2州の親露派が、独立やロシア編入を訴えて中枢施設を占拠し、ウクライナ政府軍との大規模戦闘に発展した。
14年7月には、マレーシア機が戦闘地域の上空で撃墜された。国際捜査グループは、ロシア軍所属の地対空ミサイルが使用されたことを特定している。
和平協議で焦点となっているのは、親露派支配地域をどうウクライナに復帰させるかである。15年2月の和平合意は、この地域に「特別の地位」を与えることや、ウクライナによる東部国境管理の回復をうたった。
その具体化で行き詰まっている。ロシアが「特別の地位」を前面に押し出しているのに対し、ウクライナは国境管理の回復を優先させるべきだと考えている。
そもそもロシアがウクライナ東部に介入したのは、この地域に「高度の自治権」を持たせ、ウクライナに連邦制を導入させる思惑からだった。そうしてウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に接近するのを阻止しようと考えた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、連邦制は受け入れられず、クリミアも東部もウクライナ領だと力説している。喜劇俳優出身で手腕を疑問視された同大統領だが、毅然(きぜん)と正当な主張をしていることを評価すべきだ。
クリミアを一方的に併合し、東部でも自国の影響力を残そうとするロシアの行動は到底容認されない。ロシアは前提条件を付けずにウクライナから手を引くべきである。北方領土をロシアに不法占拠されている日本は、ウクライナと認識を共有せねばならない。