台湾に生きる 対中「無血開城」で勝海舟に 統一派候補の謝啓大さん





台北市内でインタビューに応じる中華統一促進党の謝啓大候補

 正月の台北市内を歩いていると、「台湾の勝海舟を目指す」と書かれる街宣車を見かけた。中国との統一を主張するミニ政党、中華統一促進党の選挙カーだ。同党は台湾独立志向の与党・民主進歩党を厳しく批判し、幕末の勝海舟が江戸城を無血開城したように、中国を受け入れて台湾問題を平和解決することを公約にしている。

 総統選と同じく11日に投開票が行われる立法委員(国会議員に相当)選で、10人以上の候補を擁立し、比例区名簿の1位となっているのは、元立法委員の謝啓大さん(70)だ。

 中国の江西省に生まれた謝さんは幼い時に両親と一緒に台湾に渡り、教師、裁判官などを経て、1990年に無所属で立法委員選に出馬し当選。その後、立法委員を3期9年務めた。93年に親中派政党・新党の立ち上げに参画し、党主席にも選ばれた。2001年に落選後、中国に渡り、弁護士やボランティア活動をしながら、「祖国を知るために」と各地を訪ねた。国営中央テレビ(CCTV)などにも頻繁に登場し、台湾問題などを論評した。

 今回、約20年ぶりに立法委員を目指す理由について「(総統の)蔡英文氏たちに台湾を任せていたら、独立の方向に進んでいき、いずれは戦争になる」との危機感からだという。謝氏は「一部の米国、日本の勢力がいま、台湾に深く介入し、中国と戦争になるように仕向けている」との持論を展開した。その目的については「中国の発展を阻止するためだ」と主張した上で「今の香港での混乱も米国と英国の介入によって作られた」と断じた。

 「中国と一緒になった場合、台湾の民主主義と自由は大丈夫なのか」との質問に対し、謝氏は「米国と日本で政治家を選ぶ方法が大きく違うように、民主主義にはさまざまな形がある。いまの中国の政治体制は中国に合う民主主義だ」と説明した。

 「中国の指導者は皆、地方で経験を積みながら実績を上げ、厳しい党内選考を一つずつクリアした。非常に有能だし、バランス感覚も良い」と話した上で「重要なことは最高指導部のメンバーが話し合って決める中国は、選挙のたびに大きく混乱する台湾よりずっと効率が良く、広く民意を反映できる」とも話した。

 近年の中国の軍備増強について、謝氏は「中国には列強に蹂躙(じゅうりん)された悲しい歴史があり、軍備増強をしなかったら、イランのように米国にいじめられることが目に見えている」と正当化した。

 「約150年前、日本の勝海舟が江戸開城を決断したことで、100万人以上の住民が戦火に巻き込まれずに済み、多くの文化財も後世に残すことができた。台湾も同じように正しい選択をすべきだ」と謝氏は語気を強めた。(台北 矢板明夫、写真も)



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