トンネル、道路の点検にハイテクの「目」 高性能カメラとAI診断で安全守る 一般車両搭載で対象エリア拡大

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天井板崩落事故が起きた中央自動車道上り線笹子トンネルの大月市側出口付近
天井板崩落事故が起きた中央自動車道上り線笹子トンネルの大月市側出口付近
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 1960年代の高度経済成長期に相次ぎ建設された道路や橋、トンネルなどの公共インフラが完成から50年以上経過し、深刻な老朽化を迎えている。国土交通省は国や自治体などが管理するインフラの定期点検を義務づけているが、地方では予算の制約や技術者不足の影響で思うように管理できていない自治体もある。中央自動車道笹子トンネルで2012年、吊り下げていた天井板が崩落して9人が死亡する事故が発生しており、インフラの老朽化は利用者の安全を脅かす。安全性が確保されずに通行が規制されている道路や橋もあり、点検の効率化は待ったなしだ。

 国交省は老朽化による事故を防ぐための各種インフラ点検要領の改定を順次進めており、赤外線センサーやドローンなどを使うハイテク点検も認めていく方向にある。従来は技術者による目視やハンマーで構造物を叩いて音の変化で異変を察知する方法だったが、ハイテク点検の解禁で精度を高めるとともに、効率化を図るのが狙いだ。


全国各地でインフラの老朽化が進んでいる
全国各地でインフラの老朽化が進んでいる
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 老朽化によるインフラの異常を早期に発見できれば、利用者の安全を確保するだけでなく、適切な維持・管理を通じてインフラを長く使う長寿命化を促すことも可能になる。長寿命化は修繕費の縮減にもつながると期待されている。こうしたハイテク点検は海外でも多くの需要が見込まれており、新たな成長分野として注目を集める。

 コスト高と人手不足という問題点を、ハイテク点検の導入で、解決しようという動きはすでに始まっている。

道路点検を「低コスト化×長距離計測」

 これを受け、民間が開発した新しい技術を活用し、老朽インフラの維持管理や補修の効率化を進める動きも出てきた。リコーは、光学技術やデジタル技術、AI(人工知能)などのテクノロジーを生かした社会インフラ向けの点検サービスに乗り出している。

 2019年8月にリリースした「リコー 路面モニタリングサービス」は、複数台のステレオカメラを搭載した一般車両を用いて、走行しながら路面の状態を撮影し、AIによる機械学習を活用した分析を行うことで、撮影から測定結果解析の自動化、報告書の作成までを効率的に行うサービスだ。

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 日本国内にある約122万㌔㍍の道路(実延長)のうち、自治体管理の市町村道が約84%を占める。これらは、高度成長期に敷設された路線も多く、老朽化が進んでいるにもかかわらず、点検しきれていない道路が多く存在するという。

 リコーデジタルビジネス事業本部ビジネスインキュベーションセンターの岸秀信スマート社会インフラ事業室長は「路面モニタリングシステムを使えば、計測装置の製作費用や維持管理費用を大幅に削減できるうえ、従来、人手による多大な工数を要していた測定結果の算出や、報告書作成までのプロセス全体の自動化に伴う費用抑制効果も見込める」と話す。


リコーの岸秀信スマート社会インフラ事業室長
リコーの岸秀信スマート社会インフラ事業室長
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 一般的に、道路の維持・管理の指標には、「ひび割れ率」「わだち掘れ量」「平たん性」の3種類のデータを測定する。これまでは、レーザー技術の活用が主流であるため、大きな電源を搭載する必要があり、主にマイクロバスサイズの大型専用車両で点検している。

 これに対し、リコーの路面モニタリングシステムは、ステレオカメラを搭載した一般車両を活用できるため、省電力、軽量・小型化が可能になり、小回りが利く。大型専用車両では点検しきれなかった生活道も走行できるため、点検対象は飛躍的に拡大する。


路面性状モニタリングシステムを搭載した車両
路面性状モニタリングシステムを搭載した車両
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 このシステムは2018年8月、一般財団法人土木研究センターの性能確認試験に合格した。ステレオカメラで測定する手法では初めての合格。リコーは建設コンサルタント会社と連携し、新技術を使って、全国の地方自治体の路面性状調査の受託業務を展開している。

 全国の自治体が関心を寄せるきっかけとなったのは、政令指定都市である静岡県浜松市での採用だ。同市は政令市として国内最長の総延長約8,500㌔㍍の道路を持つ。市街地の点検はできていたが、北部の山間地などの生活道路の点検は困難で、職員がパトロールするなど人手に頼るしか方法がなかったという。リコーの路面モニタリングシステムの採用により、一般車両で山間部の生活道路もカバーできるようになった。


車両後方のステレオカメラで路面の3次元画像と輝度画像を同時に撮影
車両後方のステレオカメラで路面の3次元画像と輝度画像を同時に撮影
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 岸氏は「発信力ある浜松市の採用事例が周辺自治体や他の政令指定都市、都道府県などにもインパクトを与えている。新技術で生活道路をカバーし、コスト削減にも効果があるという認知度が高まった。これまで手が届かなかった生活道路を効率的に点検することができれば、修繕などの手当てが必要なところを見定めることができ、社会全体のトータルコストも下がっていくはずだ」と話し、路面モニタリングシステムの普及に手ごたえを感じている。

被写界深度拡大カメラで暗いトンネル内を明瞭に撮影

 さらに、リコーは、笹子トンネル事故をきっかけに義務付けられたトンネル点検を効率化できる新技術の開発も進めている。老朽化が進むトンネルの維持・管理の重要性が高まる中で、トンネル点検は、人手による作業や高所作業車の利用で交通規制が必要となるなど、手間と時間がかかるのが課題だ。

 リコーの新システムは、被写界深度拡大カメラを搭載した一般車両を使い、走行しながらトンネル内壁を撮影し、画像をデジタル化することができる。「近接目視」を基本とした人手作業の部分を大幅に代替することが期待されている。さらに、デジタル化した画像から展開画像を作成し、変状図や調書を作成することで、誤記や記入漏れなどのミスを削減することができる。


リコーのモニタリングシステムは通常の速度で走行するだけでトンネル内の状態を計測できる
リコーのモニタリングシステムは通常の速度で走行するだけでトンネル内の状態を計測できる
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 被写界深度とは、撮影画像の焦点が合っているように見える被写体の距離の範囲のことを言う。


従来カメラと被写界深度拡大カメラでの撮影画像の比較
従来カメラと被写界深度拡大カメラでの撮影画像の比較
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 リコーデジタルビジネス事業本部ビジネスインキュベーションセンターの茂木洋一郎スマート社会インフラ事業室副室長は「一般的なカメラでは、絞りを絞ることにより被写界深度を広げられるが画像が暗くなってしまう。トンネル壁面を走行しながら撮影するには非常に明るい照明が必要になる。これに対し被写界深度カメラは、明るさを維持したまま被写界深度を広げることができる。明るいレンズを利用できるため、省電力化でき、小さな一般車両での撮影が可能となった。この一般車両に搭載した装置によって、アーチ型になっているトンネル内部の壁面を高精度に撮影し、細かな亀裂などの劣化状況を正確に把握することができる」と話す。


リコーの茂木洋一郎スマート社会インフラ事業室副室長
リコーの茂木洋一郎スマート社会インフラ事業室副室長
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 2019年11月、この一般車両搭載型トンネル点検システムが、国土交通省の公共工事等における新技術情報提供システム(NETIS:New Technology Information System)に登録された。国も新技術の採用を拡大する方向で規制緩和を進めている。リコーは、商用化へ向けて効果的なマネタイズが期待できるビジネスモデルを検討中だ。

 岸氏は「インフラの老朽化への維持・管理を新しいデジタル技術で効率化することで、安全・安心の社会の実現に貢献したい。まずは路面とトンネルの点検の効率化を進め、今後は、このほかの様々なインフラ領域への利用拡大に向けて技術開発を進めるのが、当社の至上命題だと考えている」と話している。

※肩書は取材当時(2019年11月)のものです。

社会インフラ向け点検サービス「リコー 路面モニタリングサービス」の提供を開始~リコー独自の光学技術とAIで道路インフラの維持・管理の効率化に貢献~

一般車両搭載型トンネル点検システムがNETISに登録~わずかな調整のみでトンネル壁面を走行撮影し、点検調書作成を支援~

人々の「はたらく」をご支援するリコーの取り組みについてはこちらから

提供:株式会社リコー

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