菅義偉(すが・よしひで)官房長官は10日、衆参両院の議院運営委員会理事会に出席し、通常国会を20日に召集する方針を正式に伝えた。会期は150日間で会期末は6月17日。政府は提出法案を60本前後に絞り、会期内の確実な成立を期す。一方、主要野党側は首相主催の「桜を見る会」やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件のほか、10日に命令が出された海上自衛隊の中東派遣でも政府を追及する構えで、与野党の激しい攻防が予想される。
「特に(令和元年度)補正予算案は災害復旧・復興予算を含んでおり、現場は一日千秋の思いで予算成立を待っている。(野党に)審議の促進をお願いした」
自民党の森山裕国対委員長は衆参両院の議運委理事会に先立って行われた与野党国対委員長会談後、記者団にこう説明した。
通常国会で政府は補正予算案と2年度予算案に加え、パートなど短時間労働者への厚生年金の適用拡大を柱とする年金制度改革関連法案などを提出する方針。閉会後は東京都知事選や東京五輪・パラリンピックが控え、会期延長が困難なため、政府は法案数を絞り込み、安全運転に徹する構えだ。
ただ、見通しは厳しい。先月にはIR汚職事件で当時自民党の秋元司容疑者が収賄容疑で逮捕された。事件に絡んで複数の自民議員が聴取を受け、波紋は広がっている。与党幹部は「通常国会への影響は間違いなくある。野党はIRで攻めてくるだろう」と危機感を募らせた。一方、「カジノを正面に据えた論戦を国会で挑む」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と意気込む主要野党は20日にIR実施法の廃止法案を共同提出する方針だ。
また、野党は、海自の中東派遣撤回を求めている。10日の与野党国対委員長会談では、派遣反対の意向を安倍晋三首相らに伝えるよう与党側に求めた。安住氏は記者団に「ぎりぎりまで中止を求める」と強調した。野党は公職選挙法疑惑で辞任した2閣僚の問題への追及姿勢も崩しておらず、政府・与党は強い逆風にさらされそうだ。(今仲信博、中村智隆)