金融庁の審議会が、東京証券取引所にある4つの市場を3つに再編するよう求める報告書をまとめた。曖昧だった市場の位置づけを明確化し、投資家にとって分かりやすい市場構造に改める。
令和4年上半期をめどに開始できるよう、東証が報告書を踏まえた具体的な制度設計を行う。
報告書の狙いは妥当である。欧米やアジアの取引所との競争が激化する中で、東証の存在感は低下した。市場の魅力を高める改革が急務なのは当然である。
残念なのは、肥大化した東証1部の企業数の絞り込みが事実上見送られたことだ。現在の1部上場企業は引き続き最上位市場に残れる。これでは市場の名称が変わるだけとみられても仕方がない。
市場には、企業が上場を維持するための経営努力を促す役割がある。上場が既得権益化すると、この機能はうまく働かない。そうならないよう、上場企業の高いガバナンス(企業統治)を確実に担保できる制度設計を求めたい。
東証には現在、1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場がある。ただ、新興企業の上場先にジャスダックとマザーズがあるなど、この区分には重複も多い。
このため株式の時価総額やガバナンスの水準が高い企業が上場するプライム市場、それに続くスタンダード市場、ベンチャー企業向けのグロース市場に再編する。
プライムの上場基準は、市場で売買される株式の流通時価総額で100億円以上が目安だ。ただし現在の1部上場企業は、これを満たしていなくてもプライムに移れる。トップ市場から降格する企業が出ないよう配慮したためだ。
改革で問われたのは、上場企業の6割が1部に集中し、時価総額1兆円超の巨大企業から数十億円の企業まで混在する分かりにくさをどう改めるかである。そこに踏み込まないなら、改革の意義も減じると言わざるを得ない。
注目したいのは、報告書が、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄を絞り込む考えを示したことだ。TOPIXには1部上場の全銘柄が組み込まれている。そこから時価総額の低い銘柄を外し、投資対象としての機能性を高める。外れると株価が下がる恐れがあるため、企業側は新指数に入るよう企業価値を高めなくてはならない。大切なのは、改革を企業の成長にどうつなげるかである。