【日本の議論】習主席「国賓」来日の是非 「4つのトゲ抜くのが先」「目的と格に見合う待遇を」

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会談を前に握手する安倍晋三首相と中国の習近平国家主席=2019年12月23日、北京の人民大会堂(共同)

会談を前に握手する安倍晋三首相と中国の習近平国家主席=2019年12月23日、北京の人民大会堂(共同)

 政府が今春の実現を目指す中国の習近平国家主席を「国賓」として招く計画に反対の声がある。中国公船による度重なる領海侵入や根拠不明の日本人拘束などの課題に解決の見通しがないためだ。国民の意見も分かれている。参院議員の佐藤正久氏と東京大教授の高原明生氏に話を聞いた。

佐藤氏「まず尖閣など解決を」

 --習主席を国賓として迎えることに疑問を呈している

 「日中の首脳が懸案を話し合い、将来に向けた道筋を示すのは意味があることで、国民の間にも習氏の訪日自体に反対する人は少ないと思う。問題は国賓である必要があるのかということだ。国賓は、国民統合の象徴である天皇陛下のお客さまだ。安倍晋三首相の客人として迎賓館で迎えるのではない。皇居で、まさに首相が端に控える中で、陛下自らお迎えするわけで、重みが全く違う。国賓として迎えなければならない理由が十分に説明されていない」

 --昨年9月の言論NPOの調査では中国に良い印象を持つ日本人は15%、良くない印象を持つ人は84・7%に上った

 「令和元年10月の内閣府の外交に関する世論調査でも、中国に親しみを感じるとした人は22・7%、親しみを感じないとした人は74・9%で、同じ傾向が出ている。この状況で、国民が習氏を国賓として迎えることにもろ手を挙げて賛成するだろうか。とてもそうは思えない」

 --政府は国賓として迎える方針を維持している

 「国賓として迎えるには環境醸成が必要だ。日中関係に刺さる“4つのトゲ”を抜くか、小さくしなければいけない。トゲの1つ目は中国艦船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域での航行や領海侵入だ。2つ目に日本人の拘束問題がある。ここ数年で15人が捕まり、うち5人は帰国したが、まだ10人が拘束されている。1人は公判がまだだが、残る9人のうち7人の刑が確定している。彼らの拘束理由や判決理由は明らかにされておらず、これは基本的人権の観点からもおかしい」

 --3つ目は

 「東京電力福島第1原発事故後の日本産の食品・飼料の輸入規制問題だ。日本側は安全性に関する科学的根拠を示しているのに、中国はいまだに新潟県産の米を除く福島、宮城など10都県の食品・飼料の輸入を全て停止している。これは日本人の対中感情を悪化させる大きな要因となっている。4つ目が香港やウイグルなどでの人権問題だ」

 --香港やウイグル、チベットなどの人権問題への批判を中国は内政干渉だとしている

 「人権は普遍的価値だから国際問題だ。香港デモで、警察は上方へ撃つべき催涙弾を市民に向けたり、警告射撃すらせず無防備の学生を撃ったりするなど行き過ぎた取り締まりをした。米英仏独は非難声明を出した。日本もダメなものはダメと言わないといけない。政府一丸となってトゲを抜かなければ、習氏を国賓として迎える雰囲気は醸成されない」 (平田雄介)

     

 さとう・まさひさ 昭和35年、福島県生まれ。防大、米陸軍指揮幕僚大卒。イラク復興業務支援隊初代隊長などを経て、平成19年に参院議員(全国比例区)初当選。防衛政務官、外務副大臣を歴任し、現在3期目。

 高原氏「目的と格に見合う待遇を」

 --習主席の国賓待遇に疑問の声が上がっている

 「外国の賓客への対応は、招請の目的と相手の格を考えることが重要だ。今回は日中の親善を深めることが目的であり、習氏が国家元首であることを踏まえれば国賓待遇以外の選択肢は考えづらい。国賓として扱わないが友好を深めましょう、というのは無理があるのでは」

 --領海侵入や人権侵害を容認する、という誤ったメッセージを送ることにならないか

 「国賓として招くことが、ウイグル族への人権侵害や(中国公船による)尖閣諸島周辺の領海侵入の黙認につながるというのは理屈が通らない。重要なのは友好親善の障害となっている課題に日本側が強い問題意識を持っている、としっかり伝えることだ。例えば日本の大学研究者の拘束も、中国では珍しい話ではないからといって軽視し、日本人の反発を理解できていない面がある。礼儀を尽くし、しかし言うべきことは言う。それがまっとうな外交だ」

 --習氏の国賓訪問が、友好親善の増進につながるのか

 「『理解不足を理解する』という点に、大いに期待している。習氏はこれまでに何度も訪日しているが、『日本国内で中国のイメージが悪いのは、日本の責任だ』という最近の発言からも分かるように、日本への理解が乏しいと言わざるを得ない。訪問日程の詳細は分からないが、地方都市への訪問などを通じ、日本人と直接触れ合う機会を数多く作ってほしい。朱鎔基元首相はかつて、日本の民放番組に出演し、日本国民との対話を行ったこともある」

 --習氏の訪日を通じ、日本は具体的に何を追求すべきか

 「日本が進める『自由で開かれたインド太平洋』構想に中国も協力する、という発言を習氏から引き出すことが大きな課題だ。『インド太平洋』が中国の主導する経済圏構想『一帯一路』との二者択一を迫る概念ではない、と表明することは『競争から協調へ』の道を示すと同時に、第三国の日中両国との経済協力を楽にする。また、水域の境界が画定されていない東シナ海の共同開発について、首脳レベルで条約締結に合意できれば大きな前進といえるだろう」

 --環境整備に何が必要か

 「相手側が一方的に問題を起こすため対応せざるを得ない面もあるが、国益を考えれば中国とけんかして良いことは何もない。日本政府が訪問の重要性を十分に説明するよう期待する。反発の大きさは高い関心の裏返しであり、必ずしも悪いことではない。注目が集まる中で成果を示し、友好親善の実を挙げてほしい」

(時吉達也)

     

 たかはら・あきお 昭和33年、神戸市生まれ。東大法学部卒業、英サセックス大開発問題研究所博士課程修了。立教大法学部教授などを経て、平成17年から東大法学部教授。著書に「日中関係史」(共著、有斐閣)など。

 【記者の目】日中外交、道のりは険しく

 習主席の国賓招請に関する見解の相違は、習氏来日を尖閣諸島周辺の領海侵入など日中間に存在する課題解決の好機とすべきだとする高原氏と、課題解決なしに国賓として迎えるのは難しいとする佐藤氏の立場の違いから生じている。

 現実の日本外交は昨年12月の首脳会談で中国に課題解決を求めつつも、解決を国賓待遇の条件とはしていない。招請の背景には中国との貿易を拡大したい経済界の意向があるとされる。

 国民の意見は、招請に「賛成」49・0%が、「反対」37・8%を上回る(同月実施の産経新聞社とFNN=フジニュースネットワーク=の合同世論調査)。しかし、もろ手を挙げての賛成ではない。

 日本の対中接近に関しては同盟国の米国に否定的な見方がある。米中対立の時代に「日中新時代」を目指す安倍首相の行く道は平坦ではない。 (平田雄介)

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