【阪神大震災】被災地癒やした「ぬくもり」今こそ NHKドラマが描く安克昌医師の生涯





安克昌(あん・かつまさ)氏(2000年12月4日撮影)

 阪神大震災の発生直後から被災者の心のケアに当たり、平成12年に39歳で亡くなった精神科医、安克昌(あん・かつまさ)医師をモデルにしたNHK土曜ドラマ「心の傷を癒(いや)すということ」が18日に始まる(全4回、午後9時~)。一般的な「復興ドラマ」とは一線を画し、安医師の生涯そのものを描く。そこには、震災を「直視できなかった」「体験していない」「覚えていない」という三者三様の制作スタッフらが気付いた「今、伝えたいメッセージ」が込められている。(渡部圭介)

 安医師は震災直後から産経新聞夕刊で被災地の精神的な問題について連載「被災地のカルテ」を執筆し、心のケアの先駆けをなした。

 「安さんの生き方に触れ、被災した故郷に向き合う力を、改めてもらいました」。こう話すのはプロデューサー、京田光広さん。「震災を直視できなかった」一人だ。

 京田さんは神戸市出身。実家が半壊した。当時、自身は東京で勤務。使命感から現地取材班の一員として神戸に戻り、取材に没頭した。

 寝る間を惜しんで取材し、3日ほどたった頃、突然、虚無感に襲われた。「俺、何やっているんだろう?」

 家族が被災し、故郷が悲しみに包まれるなか、取材する意味は何なのか。それが被災者の助けになっているのか…。自問自答を繰り返した。その後、大阪へ異動したが、被災地取材をためらい、震災に関わる番組にも目を向けられなくなったという。

 だが、東日本大震災の後、連載をもとにした安医師の著書「心の傷を癒すということ」に出合った。自ら被災しながらも被災者の心を思い、寄り添い続けた安医師の姿に、「自分も故郷を覆った悲しみに、もう一度しっかりと向き合ってみよう」と決意した。

 当初は安医師のドキュメンタリー番組を制作しようと考えたが、ユニークであたたかい人柄や、芯の強さ、在日コリアン家庭に生まれた生い立ちを知り、「出自に反問しながら生き方を見つけ、医師の道を開いていった。ドキュメンタリーでは描ききれない」と感じた。その人間性の大きさをドラマとして表現しようと考えたという。

 「逃げずに乗り越えて進んだ安さんの人生は、今も傷を抱えている人の力となる。その優しさが社会に広がってほしい」

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