【ワシントン=塩原永久】米中両国は15日、「第1段階」の貿易協定に署名した。中国が数値目標をもとに米国から農産物などの輸入を大幅に拡大。米国は通商対立が激化した昨年夏以降、初めて対中制裁関税を一部軽減する。中国は市場開放を進めるが、産業補助金の撤廃といった抜本的な構造改革は先送りした。米中貿易摩擦がさらに先鋭化する恐れは薄らぐが、両国とも既存関税の大部分を維持するため、世界経済を下押しする要因となる。
ホワイトハウスで署名式が開かれ、トランプ米大統領は「公正で互恵的な貿易の未来に向かう重要な一歩だ」と述べた。中国の劉鶴副首相が参加し、米中関係強化を呼びかける習近平国家主席の手紙を代読した。
米政府が公表した協定文によると、中国は農産物と工業製品、エネルギー、サービスの4分野で対米輸入を増やし、輸入額を来年末までの2年間に計2千億ドル(約22兆円)以上、2017年水準から引き上げる。
米国は協定が発効する30日後、中国からの1200億ドル(約13兆2千億円)分の輸入品に適用した15%の追加関税率を半減させる。
トランプ氏は式典で、第2段階の合意に向けた協議にただちに乗り出す意向を表明。「交渉カードを失うことになる」として、妥結まで既存の関税を撤廃する考えがないと話した。
一方、米政府高官によると、中国が合意に基づいて対米報復関税を引き下げる予定はないという。
中国は金融分野の市場開放や知的財産権保護を進めるが、従来の取り組みに沿った分野が中心となった。ハイテク産業や国有企業を支援する補助金の抜本是正には踏み込まなかった。協定は、競争的な通貨安誘導を禁止し、相場運用の透明性を高める「為替条項」を盛り込んだ。