米国との貿易摩擦が長期化したことで、中国の2019年の実質国内総生産(GDP)は29年ぶりの低水準に陥った。米中両国は15日に「第1段階」の貿易協定に署名したが、対立の火種はくすぶり続けたままで景気の先行きには不透明感が残る。成長が頭打ちとなる中国経済の軟着陸という大きな課題も抱え、習近平指導部にとって経済運営の難局は今後も続く。
「国内外のリスクと(困難への)挑戦が顕著に増す複雑な情勢に直面した」
国家統計局の寧吉哲局長は17日の記者会見で、昨年の中国経済が見舞われた難局をこう強調した。
最大のリスクは米国との貿易戦争だ。米中両国が互いの輸入品に追加関税をかけ合う状態が1年半も続き、貿易や消費、景況感など中国経済の幅広い分野に影響が広がり続けた。
事態が激化・長期化すればさらなる景気悪化が避けられないため、一定の譲歩も受け入れて合意の署名にこぎつけた。11~12月の経済指標を見ると企業の景況感などで、米中協議の結果を先取りする形で改善の兆しも出ているが、米中対立はハイテク分野などに広がって長期化するという見方が強く安心はできない。
国内ではアフリカ豚コレラ(ASF)の感染拡大による豚肉価格の高騰で物価が高止まりするなど、庶民の不満に直結する問題を抱える。過去の景気対策の後遺症である過剰債務や過剰生産問題といった経済リスクへの気配りも欠かせず、中国経済の内憂外患は簡単には一掃できそうにない。
さらに、改革開放政策の下で続いてきた経済成長の陰りが色濃くなる中で、新たな成長モデルを実現させるという中長期的な課題も横たわる。習指導部は、限界が来ている投資依存型から消費主導型の経済への転換で成長を維持しようともくろむが、十分な成果はまだ出ていない。
寧氏が「中国は依然として世界経済発展の最も動力がある牽引車だ」と強調したように、規模が拡大した中国経済の影響力は大きく、かじ取りを誤れば世界経済を巻き込む恐れがある。(北京 三塚聖平)