財政健全化へ多難な道のり アベノミクスに陰り


 内閣府が17日に示した中長期の財政試算は、政府が国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を目指す令和7年度も3兆6000億円の赤字になるとして、昨年7月の前回試算から赤字額が拡大した。政府の2年度予算案は一般会計の総額が当初予算として2年連続で100兆円を超すなど歳出が膨らむ中、「アベノミクス」のもとでの税収増に陰りもみえ、財政健全化は多難な道のりが続く。

 「(赤字額の)3兆6000億円は決してむちゃくちゃに(PBの均衡化が)難しい数字ではない。しっかりと歳出改革の努力を実行したい」。西村康稔経済再生担当相は17日、政府の経済財政諮問会議後の記者会見でこう強調。平成28~30年度の3カ年で3兆9000億円の歳出効率化を実現したことを根拠に挙げた。

 ただ、7年度のPB黒字化について、大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「もともと困難だとみていたが、実現可能性はさらに低下した」と指摘する。

 試算のうち高成長ケースは、経済成長率が2020年代前半にかけて名目3%程度、実質2%程度を上回ると想定。政府は昨年12月に決定した経済対策などを通じて、こうしたシナリオの具現化を狙うが、楽観的すぎるとの声は絶えない。

 4年には、終戦直後のベビーブームに生まれた「団塊の世代」が75歳以上になり始めるため社会保障費の増加が見込まれ、歳出の増大に一層拍車がかかる。

 一方、税収は拡大を続けてきたが、元年度の税収見積もりは法人税収の減少などで昨年12月に大幅に下方修正した。神田氏は「政府は、経済が成長し税収が増えていく中で、目安を設けて歳出を抑えることでPBを改善する姿を描いてきた。ただ、足元では企業収益が頭打ちになるなど、税収は緩やかな増加しか見込みにくくなっている」と話す。

 政府は2年度の税収を、消費税増税の効果も踏まえて63兆5130億円と過去最高を見積もる。ただ、景気や企業収益の動向次第では、また年度途中の下方修正や国債の追加発行を迫られかねない。そうなれば財政健全化はさらに遠のく。(森田晶宏)



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