和牛遺伝子、流出に刑事罰 知財保護で法案提出へ


 農林水産省は20日、和牛の受精卵や精液などの「遺伝資源」の海外流出を防ぐため、不正な売買や譲渡、取得に刑事罰を設ける法案を創設する方針を固めた。遺伝資源の不正な持ち出しを防ぐ法規制がなく、保護策強化の必要性が指摘されていた。政府は今回の報告書をもとに具体的な罰則などを詰めて法案の策定を進め、3月上旬の閣議決定、6月の成立を目指す。

 同日、農水省の有識者会議で中間報告案が了承された。中間報告案では、遺伝資源を「知的財産」と見なして保護を図り、ルールに違反した転売などの取引や生産を差し止める規制を設ける必要があるとした。和牛は欧米やアジアで人気があり、遺伝資源の流出を防ぐことで輸出拡大につなげる狙いがある。

 受精卵や精液を不正に売ったり、譲渡した相手が国外に勝手に持ち出したりするなど、悪質な事案には刑事罰を科す。また、遺伝資源が悪用されることが事前に分かれば、譲渡先の業者などに対し、遺伝資源の使用や輸出の差し止めを請求できる権利を設定する。

 和牛の遺伝資源をめぐっては、不正に持ち出された受精卵や精液が中国の税関で見つかった事件に関連して昨年末、元牧場経営者が大阪地裁で有罪判決を受けた。だが、遺伝資源の不正な持ち出しを防ぐ法規制がないことから、問われた罪は、輸出先の国で伝染病が広がる可能性があることを理由とした家畜伝染病予防法違反幇(ほう)助(じょ)などだった。

 中間報告案をとりまとめた有識者会議で、委員を務める神戸大の大山憲二教授は20日、産経新聞の取材に対し、「家畜の飼育に関して技術的にすでに高い水準にある中国へ流出すれば、日本が力を入れようとしている和牛輸出に想像ができないほどの経済損失が生じる」と指摘した。



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