中国の家電大手、ギャランツの創業家が代表を務める投資ファンドは21日、象印マホービン(大阪市)の株式13・5%を取得したと明らかにし、象印に対し社外取締役の選任を求める株主提案を行ったと発表した。象印の海外事業などに懸念があるためとしている。象印は提案を拒否。来月19日の株主総会に向け両者の動向に注目が集まっている。
「効率的な経営や投資が行われているか、大きな疑問がある」「グローバル市場における成長機会を十分に捉えきれていない」
ギャランツの創業家出身で副会長の梁恵強氏が代表を務める投資ファンド「エース・フロンティア」は21日、株主提案を行った理由を文書で発表した。平成30年10月から象印株を保有。ギャランツ日本法人(大阪市)などと共同で今月上旬までに13・5%取得した。
象印は中国からの訪日客による「爆買い」などで高級炊飯器の売り上げを伸ばしてきた。ただ、爆買いを支えたバイヤーらの購買に中国当局が規制をかけたことなどから沈静化。また、電子商取引(EC)への対応遅れもあり、令和元年11月期まで4期連続の減収、3期連続の営業減益に。令和元年11月期の中国での売上高は約27%減となった。
ファンド側によると、象印の市川典男社長ら経営陣と中国市場など海外戦略の出遅れやガバナンス体制の強化について協議してきたが、具体的な回答がなかったとしている。打開策として昨年末、日銀出身で弁護士の長野聡氏(57)を社外取締役候補として提案。象印は今月14日の取締役会で反対を決議し、対抗案としてサントリーホールディングス副会長の鳥井信吾氏(67)を社外取締役候補とした。「企業価値などの観点から最も適切」などと主張。決着は株主総会に持ち越される。
委任状争奪戦(プロキシーファイト)や株式公開買い付け(TOB)などに発展するかも注目で、ファンド側は「(可能性は)低いがゼロではない」と含みをもたせる一方、「提案とは別にギャランツは事業提携に向けて象印と協議しており友好的な関係を望んでいる」とする。
ギャランツは世界の電子レンジ市場で高いシェアをもち、生活家電での協業も視野にあるとみられる。また、象印株は市川社長ら創業家などが約30%保有し、ギャランツの提案が通る可能性は低いこともあるようだ。象印は21日「提携は検討しているが、メリットとデメリットを見極めている」と述べるにとどめた。