【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる上院の弾劾裁判の本格審理が21日、始まった。トランプ氏と与党の共和党が月内にも無罪評決を出して幕引きを図りたいのに対し、野党の民主党は新たな証人を呼んで疑惑の徹底追及を目指す考え。トランプ氏が再選を目指す大統領選を11月に控え、与野党の対決が先鋭化するのは必至だ。
大統領が弾劾裁判を受けるのは史上3人目。
上院の審理は21日、共和党のマコネル上院院内総務が同日正式に提出した、裁判の進め方に関する決議案を裁決する。賛成多数で可決の見通し。
決議案によると、検察官役の下院民主党議員団とトランプ氏の弁護団は、意見陳述の機会をそれぞれ24時間与えられる。当初の決議案は陳述を最長4日間で終わらせるとしていたが、「日程を詰め込みすぎ」との批判が与野党から上がり、6日間に延長された。
裁判での焦点の一つは、ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)など、疑惑の核心を知りうる立場にある証人の尋問が実現するかどうかだ。
上院(定数100)の現有勢力は共和党53人、民主党47人。トランプ氏を罷免するには陪審員役を務める上院議員の3分の2の賛成が必要だ。民主党は、証人尋問で同氏に不利な証言を引き出して打撃を与え、「罷免は極めて困難」とみられている形勢の逆転に望みをつないでいる。
証人尋問を実施するかどうかは、22日から始まる意見陳述の後、上院議員による16時間にわたる双方への質問を経て採決される。
証人尋問は過半数の賛成で実施される。共和党の穏健派議員のうち少なくとも4人は証人尋問を排除しない立場を示しており、共和党が証人尋問の阻止に向けて党内の引き締めを図れるかも注目されている。