茨城県は4月から、学校などでの盗撮行為を規制する改正迷惑防止条例を施行する。スマートフォンの普及に伴い、学校を舞台とする盗撮被害が相次いでいることが理由だ。背景には、軽犯罪法をはじめとする既存の法令では盗撮行為を立件できないケースが多く、警察が十分な対応をできなかったという事情がある。
茨城県教育委員会は昨年5月、教え子の女子生徒のスカート内を盗撮したとして、県立高校の男性教諭を懲戒免職処分にした。
男性教諭は昨年4月11日の昼下がり、勤務する高校の通用門付近の敷地内で桜などを撮影していた女子生徒4人に声をかけられ、会話を交わしていた。
“犯行”はこの直後に起きた。教諭は女子生徒のうち1人の背後にさりげなく回り込み、スマートフォンでスカートの中を約1分間にわたって動画撮影したのだ。
その場にいた他の生徒が気づいて学校側に相談、校長が確認したところ、教諭はあっさりと盗撮行為に及んだことを認めた。「衝動的にやってしまった」。教諭はこう釈明したという。
ただ、茨城県警はこの教諭の立件を見送らざるをえなかった。
捜査関係者によると、スマートフォンによる盗撮行為は軽犯罪法違反容疑などでの立件を念頭に捜査することが多い。しかし、同法は「日常的に衣服を着脱する場所」での盗撮を規制するもので、今回の事案に適用することはできなかった。学校は教諭の勤務先であるため、建造物侵入容疑での立件も難しい。
現行の茨城県迷惑防止条例は、道路、駅といった不特定多数の人が行き来する「公共の場所」に限って盗撮を規制しており、学校の敷地内などは対象外だ。
盗撮が「脱法行為」になってしまった今回のケースは、実は氷山の一角に過ぎないという。県警関係者は「盗撮の事案を認知しても対応できないことは多かった」と明かす。
こうした状況を踏まえて成立した改正条例は、盗撮行為の規制区域を学校や企業の事務所、タクシーの車内などに拡大する内容だ。
もっとも、県警によると同様の条例改正はすでに半数以上の都道府県で行われているといい、遅きに失した感は否めない。
県警生活安全総務課の担当者は「『栃木県での盗撮行為は取り締まることができるのに、茨城県ではできない』といったおかしな状況が変わる。条例改正は犯行抑止にもつながるはずだ」と話している。
(永井大輔)