日本型雇用見直し論、安全網の議論が不可欠 春闘の視点





 連合の神津里季生会長と会談する経団連の中西宏明会長(中央)=28日午前、東京・大手町の経団連会館

 今回の労使トップ会談の成果は、両者がデフレの20年間で日本の賃金水準が国際的に劣後した現実を受け止め、賃上げの必要性で一致したことだ。

 一方、連合と経団連のトップの危機感のすれ違いも浮き彫りになった。経団連側は手をこまぬいているとデジタル社会で生き残れないとの危機感がある。これに対し、連合が強調するのは、中小企業と大企業、正規社員と非正規社員の間で広がった格差是正だ。

 経団連の令和2年春闘指針では、これまでの新卒一括採用や終身雇用、年功型賃金の日本型雇用の見直しを問題提起した。デジタル化で現行モデルも陳腐化しかねない。自動車や電気、建機メーカや大手商社は、国内市場が縮小する中、海外市場に活路を求め、多様な多国籍チームを束ねないと経営が成り立たず、すでに日本型雇用の見直しは始まっている。

 こうした中で経団連の中西宏明会長は28日の労使トップが集まる「労使フォーラム」であいさつ。デジタル化など「経営の方向性とベクトルをあわせ、社員の働きがいの向上ややりがいを引き出すための総合的な処遇改善が重要」と強調し、賃上げに加え、自発的な学び直しの教育の機会提供や総合的な処遇改善を両輪にしようと労働側に議論を呼びかけた。

 付加価値の高いサービスを生み出すには、人工知能(AI)など職務に応じた専門性の高い人材を通年で採用する「ジョブ型」制度も必要で、これまでの「メンバーシップ型」の利点を生かしながら、「ジョブ型」が活躍できる複線型の方向性も打ち出した。

 ただ、雇用流動性につながる動きには、警戒感もある。連合の神津里季生(りきお)会長は「雇用のセーフティーネット(安全網)をはりめぐらせる必要がある」と強調する。企業が一定期間採用を手控え、非正規雇用が急増した就職氷河期問題の二の舞にならないよう、国も巻き込んだ安全網の必要性を提言している。(上原すみ子)



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