新型コロナウイルスが日本国内で人から人へ感染している可能性が高まっている。確認されれば昨年末に中国で原因不明の肺炎が発表されてから、1カ月足らずという速さで感染が国内在住者に及んだことになる。グローバル化により人の往来が増えていることが背景にあるとみられ、有識者からは、政府の感染症対策の見直しを求める声も上がっている。(蕎麦谷里志)
新型コロナウイルスは昨年12月31日、中国湖北省武漢市当局が市内の医療機関で27人がウイルス性肺炎を発症したと発表。約2週間後の今月15日に国内初の感染者が確認され、28日には渡航歴がないバス運転手の男性の感染が確認された。
海外で発生した感染症が日本国内に持ち込まれた過去のケースだと、国内で感染者が見つかるまで2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)は約6カ月、09年の新型インフルエンザは約3カ月かかっており、今回は極めて早く国内感染者が見つかっている。
発生場所やウイルスの特性、感染力、感染してから症状が出るまでの潜伏期間の違いなどもあり、単純比較はできないが、東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)は「グローバル化の影響が大きいとみるべきだ」と指摘する。19年の訪日外国人は09年の4・7倍に増加、特に中国からは10倍近くまで増えているためだ。これまで以上の速さで感染が広がる前提で、医療機関の連携や国民への情報発信などを行う必要があるといい「政府の感染症対策を点検し見直すべきだ」と語る。
実際、厚労省の担当者は26日に「国内では現状、人から人への感染が起こりうる状況にはない」としていたが、バス運転手の男性は、今月8~16日に武漢市からのツアー客をバスに乗せていた。このときに感染した可能性が高い。
MS&ADインターリスク総研の坂井田輝(あきら)上席コンサルタントは「取るべき対策は変わらないが、今後も従来の想定を超えた速さで事態が進展することは十分あり得る。何かあってからの対応では遅い」と事前準備の重要性を呼びかける。