ジャーナリスト、櫻井よしこ氏の新春特別講演会が松山市民会館で開かれ、櫻井氏は「令和は厳しく現実的に対処しなければ、もしかして私たちは奈落の底に落とされるやもしれぬ危機に取り囲まれている」として、中国、ロシアに対処するためには日本が本当の意味で独立国家にならなければならないと述べ、防衛力の強化を主張した。
櫻井氏は今月11日に行われた台湾総統選挙で、現職の蔡英文氏が圧勝で再選したことについて、香港で起きた民主化を求める運動と中国共産党の弾圧を、自分たちのことと受け止めた結果だとして「中国共産党の圧政が蔡氏の圧倒的勝利をもたらした」と述べた。
蔡氏が圧勝し、米国をはじめ国際社会が味方している状況を、中国は「しばらく静観するだろう」と予測。「人間は何年間も心を緊張させていられず、油断するときが来る。その時は中国はチャンスとみて介入してくるだろう」と警戒感を表した。
一方、ロシアのプーチン大統領はかつての東ヨーロッパ諸国をもう一度、支配下に置きたいと考えていると指摘。NATO(北大西洋条約機構)の軍事費分担をめぐる米国と独仏の対立や、英国のEU(欧州連合)離脱などヨーロッパは分解しようとしており、プーチン氏はチャンスと見て、かつての自分たちの力を取り戻そうとしているとの分析を披露した。
中国とロシアにとって共通の敵は米国と説明し、2018年に米国はRIMPAC(環太平洋合同演習)から中国を外し、同じ年に中露は戦後最大規模の合同軍事演習を行ったことから、櫻井氏は「精神的には同盟国になっている」との見方を示した。
さらに「私たちは米中露の対立構図の真ん中にいる」と、日本を取り巻く厳しい軍事情勢を紹介し、米中貿易戦争について「10年、20年、30年続くだろう」と予想。一党独裁の中国は監視カメラなどデジタル技術を効率よく使って社会秩序を保つことができるが、民主主義の米国は一つの路線をまっすぐに進むのは難しく、国をまとめるには一党独裁より弱い。その観点から、「中国の方が勝つのではないか」という見方があることを示し、「絶対に中国に勝たせてはいけない」と強く主張。会場に向けて「自分のこと、次の世代のこととして考えてほしい」と訴えた。
また、「アジアの民主主義、民族独立、宗教の自由、母国語を話すことを守らなければならない。そういう時代が他の民族には来ている。ウイグルの人たちは200万人が収容所で中国語を使えと強制されている。チベット、モンゴルもそう。中国は介入してくる。米国任せではいけない。私たちが考えを、状況を変えなければならない」と警鐘を鳴らし、アジアの人たちに勇気を与えるためにも、日本が防衛力を持つ本当の意味での独立国にならなければならないと力説。
「平成の時代に先送りしたことを、獅子奮迅の勢いでやらなければいけない。簡単ではないが、困難な道を歩むことなく達成することはできない」と述べた。
習近平国家主席の国賓待遇による来日については「中国に負けてはならない。日中の品格の差を日本人全員で国際社会に見せる。その気で臨むべきだ」と述べた。
櫻井氏による特別講演会は愛媛銀行の主催で毎年開いており、今年は13回目だった。