日本郵政、問われるリスク感度 全容解明さらに長期化 6万人追加調査





会見する日本郵政の増田寛也社長=31日午後、東京都千代田区(鴨川一也撮影)

 かんぽ生命保険の不正販売問題で、不利益を被った疑いのある契約者が新たに約6万人いることが判明した。不正の全容解明にはさらに時間がかかる見通しだ。先行きの不透明感が強まる中で、日本郵政グループが組織を立て直し、失墜した信頼を回復するには、トップの実行力が問われる。(万福博之)

 「外から見たのと中の認識が相当食い違っていた。リスク感度を高め対応すべきだった」。31日の会見で日本郵政の増田寛也社長は危機意識をあらわにした。

 郵政グループは保険乗り換え時の二重払いなど不利益を与えた疑いのある5つの事例について、昨年8月から対象の約15万6千人の実態調査をしてきた。だが、それ以外にも不正が疑われるケースがあると社内外から指摘されていた。

 今回、こうした声を受け止め、契約と解約を多数回繰り返した事例などを新たに調査対象に加えたのは、経営陣刷新の効果といえそうだ。再生に向けて再出発を図るには、不正の実態解明と不利益を被った顧客への対応が大前提となる。

 だが、従来の調査が終わらない中、追加調査が生じることで、3月末としていた調査のめどは6月末にずれこむ。これにより、金融庁と総務省からの新規保険販売の業務停止処分が解除される4月以降の展望もみえにくくなった。

 かんぽ生命と日本郵便は昨年7月から保険販売を自粛している。郵政グループにとって保険販売は収益の柱の一つ。販売自粛後の新規契約は前年の約1割に落ち込んでおり、この状況がどこまで続くかが焦点になる。増田氏は販売再開について「改善計画を実行するのが使命であり、それすらないのに申し上げるのは難しい」と明言を避けた。

 実態調査以外も取り組むべき課題は山積している。不正の背景にはグループ内で情報共有が滞る企業風土や企業統治の機能不全などがあり、抜本改革が不可欠だ。だが、政治・官庁などの利害関係者が錯綜(さくそう)する中での巨大組織の改革は容易ではない。増田氏は「古い組織風土を変え、顧客本位の理念を浸透させるのはこれから。どこまで実行できるかが、われわれに問われている」と強調した。



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