昨年末「『韓国に親しみ』26%(過去)最低」という見出しの記事(12月21日付朝刊)を目にして、学生のころから韓国に関心を持ってきた私は、残念だが仕方ないとも思った。この統計は内閣府の「外交に関する世論調査」。韓国に「親しみを感じる」と答えた人は前年から12・7ポイント減の26・7%で、「親しみを感じない」は71・5%で過去最多となった。一昨年10月のいわゆる徴用工判決以降、日韓関係は「過去最悪」といわれ続けているのだ。
ところが、昨年末、大阪生野コリアタウン(大阪市生野区)を取材で訪ねると日本人の中高生らでにぎわい、韓国人の若い店員も多く働いていた。地元の人に聞くと、カフェなど新しい店も増え、空き店舗が出ればすぐに埋まるという。若い世代にとってコリアタウンは遊びに行く場所として定着しているようだ。取材中の記者の横を「日韓関係が悪いってニュースで言ってたけど、ぜんぜん感じないね」と女子大生がおしゃべりしながら通り過ぎていった。
現場の様子に驚いたが、実は前出の内閣府の統計を詳しく分析すると謎が解ける。かぎは世代間のギャップだ。韓国に「親しみがある」と答えた割合は、18~29歳は45・7%、30代は32・5%と若い世代ほど高い。年齢層が高くなると低下する。若い世代に2000年以降の韓流ドラマやK-POPの流行、最近ではLCC(格安航空)の登場で旅行先として浸透したことも背景にあるのだろう。
韓国ではどうか。近年、若者を中心に日本への旅行や日本食が流行したが、昨夏、日本の輸出管理強化への反感から日本製品不買運動が起き、人気の日本製ビールの輸出量も激減したという。
しかし、先月、ソウルに旅行に行くと、毎週末デモが行われる光化門広場近くの居酒屋には日本語の看板がかかり、席は結構埋まっていた。案内してくれた韓国人の知人夫妻は、アサヒの生ビールと日本酒を注文しようという。変わらぬ日本びいきのお客さんがいることに安心しつつ、つい「不買運動はどこへいったのよ…」とつぶやいた。
「過去最悪」の実体は、よく分からない。ただ、良くも悪くも、常に関心を持たずにはいられない「隣国」同士であることは、よく分かった。
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【プロフィル】石川有紀
平成15年入社。奈良支局、広島支局、大阪経済部などを経て韓国に留学。令和2年2月から大阪社会部。在日外国人や日韓関係に興味を持って取材している。