日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効してから2月1日で丸1年となった。国内総生産(GDP)で世界の約3割を占める世界最大級の自由貿易圏が誕生。関税を相互に撤廃したり、引き下げたりした結果、日本の輸出では牛肉や自動車などが、輸入ではワインなどが増えた。輸入拡大は国内生産者にとって競争激化につながる一方、安価な欧州産品の流入は消費者に恩恵をもたらし自動車メーカーなどの輸出にも追い風になった。
「昨年、EUへの牛肉輸出は約3割増えた」。安倍晋三首相は1月20日、衆院本会議での施政方針演説の中で、日欧EPAの効果をこう強調した。
日欧EPAにより、日本は欧州産ワインの関税を即時撤廃するなど、品目ベースで約94%の関税を撤廃。EU側も日本製の自動車の関税を8年目に撤廃するなど、約99%の品目で関税を撤廃する。
経済効果として日本政府は、国内の実質GDPを約1%(約5兆円)押し上げ、雇用も約0・5%(約29万人)増加させると試算している。
日本は日欧EPAの他、既に発効している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など多国間の枠組みで、米中による追加関税の応酬といった保護主義的な動きに対抗する構えだ。日本は中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)についても、インドを含めて年内の妥結を目指している。
ただ、1月31日に英国がEUを離脱。今年末までは移行期間として、日欧EPAによる関税引き下げなどの効力が日英間にも及ぶが、年末までに日英両政府が貿易協定を結べなければ、日英間の効力が失われる懸念がある。(大柳聡庸)