トヨタ自動車は6日、令和2年3月期の連結業績見通しを上方修正し、世界市場での存在感を示した。ただ、日本での販売台数を超えて同社の業績を牽引(けんいん)している中国市場は、自動車需要が減少基調。米中貿易摩擦に代表されるように変動リスクも多く、新型コロナウイルスによる肺炎拡大の影響も重なり、中国の先行き不透明感は増している。
「何が起こるか分からないのが実態。今の段階では改善の兆しは見られていない」。事業・販売担当のディディエ・ルロワ副社長は決算会見で中国市場の先行きに厳しい認識を示した。
トヨタの足元の中国販売は好調そのものだ。2019年は162万700台と、前年比9・0%増で過去最高を更新。日本の161万169台も抜き、米国に次ぐ主力市場となった。ルロワ氏は中国の実績については「品質の高さが魅力と感じてもらえるようになった」と胸をはる。
だが、中国市場全体は、17年の約2887万台をピークに減少傾向に入った。前年比8・2%減だった昨年に続いて今年も減速に歯止めがかからない可能性が高いとみられ、シェアを高めるトヨタは以前より影響を受けやすくなる。
今年1月のトヨタの中国販売は前年同月比1・2%減。販売店営業日数が前年より少なかった背景もあるが、新型肺炎拡大の影も落ちる。春節(旧正月)休暇明けの稼働再開がすでに遅れているうえ、「車を買うどころではないかもしれない」(白柳正義執行役員)とみられ、影響がさらに長引く恐れもある。
ルロワ氏は「昨年は米中貿易摩擦などでの落ち込みを中国や欧州、日本(の業績)が補った」として「グローバルにバランスを取る戦略で安定的に成長する」と強調したが、中国政府の環境規制強化にうまく適合できるかどうかも課題だ。
トヨタは中国にエンジンなどを含め12の工場を抱え、下請けも合わせて生産動向は各国に波及する。白柳氏は新型肺炎の影響について「在庫の確認を進めるとともに(部品の)代替生産の可能性も含めて精査している」と語った。(今村義丈)