埼玉県深谷市出身の実業家、渋沢栄一(1840~1931年)にちなみ、同県の大野元裕知事が公約として掲げた「渋沢栄一創業プロジェクト」に、県が来年度から着手することが7日、分かった。新年度予算案に関連費用を計上する。起業家が集まる交流サロンを設立するなどして、日本資本主義の父と称される渋沢栄一の「DNA」の継承を図る。
交流サロンは令和3年度に設立する予定で、2年度に発足させる有識者会議で機能や規模、運営方法などを決める。有識者会議は、ベンチャー企業支援を専門とする大学教授や県内の企業、経済団体、金融機関の関係者らで構成し、5回程度の会合を予定している。
サロンには、起業家に加え、大企業や中小企業の経営者も参加する。優れた経営や社会貢献を行う企業経営者を表彰する「渋沢栄一賞」の受賞者による講演会や起業セミナーの実施なども想定している。
厚生労働省の平成29年度雇用保険事業年報によると、埼玉県は、沖縄県に次いで全国2位の事業所開業率を誇る。ただ、県は「全国や海外に事業展開する企業が少ない」と捉えており、サロンをきっかけに次代を担う成長企業が誕生することに期待を寄せる。
県は、成長性の高いスポーツ市場の伴走型のベンチャー支援も強化する構えだ。来年度はプログラムで優秀なプランを提案した若手起業家に販路拡大やマッチング、資金調達などの支援を行う。スポーツチームやスポーツ関連企業と連携し、新たなビジネスを創出する取り組みも始める。(黄金崎元)
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■ラッピングバス、都内に今秋登場
埼玉県は、令和3年放送のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公に起用された渋沢栄一の魅力をアピールするため、東京都内を走る路線バスに今年秋、「ラッピングバス」形式の広告を出すことを決めた。新年度予算案に関連費用を計上する。
来年の大河ドラマ放送期間中には、渋沢栄一を紹介する動画広告を電車で流す。ドラマ放送前には、渋沢栄一の出身地の深谷市と、国学者の塙保己一(はなわほきいち)を輩出した本庄市、日本初の女性医師である荻野吟子が生まれた熊谷市で「3偉人スタンプラリー」を実施し、観光客の呼び込みにつなげる。