神奈川県は7日、令和2年度当初予算案を発表した。一般会計の総額は、黒岩祐治知事の3選後の昨年6月に肉付けした元年度予算と比べて2・6%増の1兆9036億円で、2年連続のプラス予算となった。同日、記者会見した黒岩知事は「財政状況が厳しいなかでも、事業の見直しを進め、未病改善や気候変動への対応など重要な施策を反映させることができた」と述べ、胸を張った。
米中貿易摩擦の影響を受けた法人税収の減額などによって厳しい財政状況となったが、財政調整基金の取り崩しや事業見直しを図るなどして予算を編成。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた取り組みや気候変動による災害への対応、東京五輪・パラリンピックの盛り上げ、未病改善に向けた施策などに重点配分した。
歳入の6割超を占める県税は同1・9%増の1兆2131億円。このうち、法人2税(法人県民税と法人事業税)が同3・5%減の2853億円となった。
昨年9月時点の当初予算編成方針では、2年度は700億円の財源不足となる見通しだったが、地方譲与税が見込みより170億円増加し、地方交付税などが90億円減少したことなどで変動。財源不足は540億円に縮小した。
不足分は減収補填(ほてん)債発行で確保した270億円を活用。事業見直しなどにより80億円、不動産売り払い収入と国の制度改正に伴う県債の増加などで60億円をそれぞれ確保し、さらに財政調整基金を130億円取り崩して収支を均衡させた。
県債の新規発行額は同5・4%増の1835億円。その結果、2年度末の県債残高は3兆3221億円の見込みで、6年連続で残高が減った。県民1人当たりの県債残高は36万1028円となる。公債費(返済)から県債(借金)を差し引いた基礎的財政収支は来年度1138億円のプラスとなり、7年連続の黒字化を達成した。
一方、歳出では支出が義務付けられている人件費や公債費などの義務的経費は同4・5%増の1兆5696億円。歳出全体の82・5%を占めるなど財政の硬直化が続いている。なかでも税交付金などが同22・8%増の2809億円、高齢化の進展に伴う医療費の増加などに伴い、介護・医療・児童関係費は同4・3%増の3983億円となった。
主な新規事業は、今年開催される東京五輪・パラリンピック大会期間中の「危機管理体制および消防・救急体制の強化」(1億696万円)▽県民の医療情報・介護情報を関係機関で共有するための「地域医療介護連携ネットワーク構築費補助」(1億7930万円)▽災害時における情報伝達機能強化を図る「防災行政通信網再整備設計費」(1億1340万円)-などを計上。
さらに、教員の働き方改革の推進として、市町村立小・中学校への「スクール・サポート・スタッフの配置」(1億9517万円)や、城ケ島・三崎(三浦市)、大山(伊勢原市など)、大磯(大磯町)の3エリアに新たな国際観光地を創出するための取り組みを支援する「観光の核づくり推進費補助」(3千万円)も新規計上した。