ジャズ作曲家、挾間(はざま)美帆(33)が注目されている。最新作が米「グラミー賞」の「最優秀ジャズ・アンサンブル・アルバム」の候補に選ばれた。惜しくも受賞は逃したが、公演で忙しい日々が続いている。帰国の合間に話を聞いた。(石井健)
東京都出身。米ニューヨークを拠点に世界を飛び回っている。先月25日は金沢市で公演。26日に東京の羽田空港から米ロサンゼルスに飛び、27日(日本時間)のグラミー賞授賞の式典に出席。29日には再び日本の土を踏み、2週間ほどの滞在予定で打ち合わせなどをこなしている。
「グラミー賞は候補になっただけで満足しちゃったみたいで、授賞式は緊張しなかった。受賞までの壁は高い。新しい壁を見つけられてよかった」
明るい声で、ハキハキと答える。スレンダーな体のどこにこれほどのエネルギーがあるのだろう。
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「ジャズ作曲家」だ。演奏家ではなく、作曲専業をうたう。日本ジャズ界の嚆矢(こうし)、秋吉敏子(90)がピアノ奏者で作曲家であるように、作曲専業の看板を掲げる人は、おそらく日本にはほかにいない。
「ジャズ・アンサンブル・アルバム」賞は、ビッグバンドなど大型編成による作品が対象。挾間の候補作「ダンサー・イン・ノーホエア」(平成30年)は、挾間が率いる13人編成の楽団「m_unit」で録音した。バイオリンなど4人の弦楽器奏者を交えたのが特徴だ。挾間は、ジャズにクラシックの要素を巧みに融合し、クラシックでもジャズでもない独自の音楽を作り出す。体温が低く、知的で透徹した音楽。
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転勤族だった。一人っ子だが、「他人の顔色をうかがい、周りの空気を読むような子供でした」。この“調整型”の性格は、楽器や音色の均衡を取ろうとする作曲という仕事に大いに役立つことになる。