大阪府は18日、総額2兆6300億円の令和2年度一般会計当初予算案を発表した。吉村洋文知事の就任後初めての予算編成で、前年度比1・5%増。2025年大阪・関西万博や誘致を目指す統合型リゾート施設(IR)の整備をはじめ、「大阪の成長」に重点を置いた。災害や感染症の対策など府民の生命や安全を守る政策に加え、子育て支援にも力を入れた。
府税収入は前年度比4・4%増の1兆3400億円を計上。法人府民税と法人事業税の法人2税は税制改正で微減し、4300億円を見込む。昨年の消費税増税に伴い、地方消費税は同16・1%増の4千億円とした。個人府民税は同4・2%増の2900億円。
歳出では社会保障経費が過去最高を更新し、一般財源ベースで前年度比5%増の5500億円に上った。府の貯金にあたる財政調整基金520億円(前年比55・5%増)を切り崩し、財源不足を補った。
万博に向け大阪市や堺市と連携し、自転車道路を対象に、会場となる人工島・夢洲(大阪市此花区)への路面案内を充実させる。関連費用に1400万円を充てる。
災害対策では、河川の下流に住む府民の安全を守るため、周辺の民有林に治山ダムを整備。事業費に2億8700万円を計上した。経済的理由で進学をあきらめる子供が出ないよう、府立大と大阪市立大の授業料などを支援する費用に18億5千万円を盛り込んだ。
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致計画に合わせ、ギャンブル依存症の対策強化に4900万円を充てた。患者を支援する組織と、依存症を治療・研究する機関が連携した「OATIS(オーティス)」を拠点に、相談から治療、回復支援まで切れ目ない一元的な対応を取る。
こころの健康総合センター(大阪市)が土曜を含め相談を受け付け、生徒向けの予防啓発教材を開発。依存症の実態把握調査も手掛ける。専門的な治療は府立病院機構大阪精神医療センター(枚方市)が担う。
IRの認定申請に向け、特集記事を組んだ府政だよりや動画、企業セミナー、職員の出前講座など情報発信を強化する。関連費用で1300万円を計上した。
児童虐待の未然防止や早期発見に注力する。子育て中の親や子供が利用しやすいよう、無料通信アプリのLINE(ライン)を通じた相談事業に3800万円を盛り込んだ。児童相談所を運営する大阪市や堺市とも連携し、府内全域から試験的に相談を受ける。
一時保護の機能強化も図る。委託先の民間児童養護施設が受け入れ態勢を整備するための支援費用に4700万円を計上。虐待見逃しを防ぐため、大阪府警との間で平成30年に始めた児童相談所通告事案の全件共有を令和2年度も継続する。関連費用に300万円を充てた。精神科医を講師とした児童相談所や市町村職員向けの研修など、医療機関との連携強化に150万円を見込む。
最先端技術で住民生活の質を向上させる「スマートシティ戦略」を推進する事業に8200万円を計上した。府内自治体が個別のシステムをわざわざ構築しなくても情報を発信できるよう、共有のデータ基盤を府が整備する。専門家に委託し、印鑑と紙と現金が不要な行政手続きを前提として全庁的に業務を見直す。
府庁の情報通信環境も整える。テレビ会議やタブレット端末を導入し、離れた庁舎間の移動や印刷の負担を軽減。安定的な情報ネットワークのあり方を調査する。関連費用に3400万円を充てた。
手数料納付窓口で電子マネーやクレジットカードなどのキャッシュレス化を進める事業費として、1500万円を盛り込んだ。