百貨店「脱炭素実現」を異例の明記 排出量算定「スコープ3」カギに





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 環境意識の高まりなどを受け、百貨店業界が温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会の実現」を自主行動計画としてまとめたことが19日、分かった。一般的な「低炭素社会」から「脱炭素社会」に踏み込んだ表現は異例。政府は今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」を実現するとしており、他業界に先駆けて積極姿勢を示す。

 日本百貨店協会が環境保全に関する自主行動計画を改定。脱炭素を掲げて加盟各社に店舗でのエネルギー効率改善などに加え、取引先とも連携して温室効果ガスの排出削減に取り組むとした。環境省によると、業界全体で脱炭素を掲げるのは、「恐らく産業界全体でも先進的な取り組み」という。

 脱炭素の目標実現に向け、業界が注力するのは「スコープ3」と呼ばれる自社以外のサプライチェーン全体で排出される温室効果ガスの量を算定し、削減につなげる取り組みだ。

 環境省などは製造や配送、廃棄などで排出される標準的な温室効果ガスの量を示している。これを参考に、例えば衣料品を販売するごとに発生するサプライチェーン全体の温室効果ガスの量が算出できる。

 百貨店がメーカーや物流業者などと連携して素材開発や物流効率化に取り組めば、標準よりも排出量を少なく見積もれるため、これを積み上げることでサプライチェーン全体で排出削減につなげられる。

 三越伊勢丹やそごう・西武など大手は既に取り組みを始めており、そごう・西武は平成24年からスコープ3を本格導入。30年までにサプライチェーン全体で実質約3%の排出量削減を達成した。ただ、大手以外ではコスト負担も大きいため、業界全体で取り組みを後押しする。

 大和証券エクイティ調査部の大沢秀一シニアストラテジストは「メーカーなどに影響力のある小売企業がサプライチェーンの川下で旗を振ることで、素材メーカーや製造業といった川上企業の取り組みにも好影響が見込まれる」と波及効果を期待する。

 スコープ3 企業がサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を抑えることが重要との考えから生まれた概念の一つ。企業は自社活動で直接排出する分(スコープ1)や電力消費などで間接的に排出する分(スコープ2)以外、自社活動に関連した他社排出分の把握が必要とされ、この他社排出分をスコープ3と呼ぶ。算定方法は国際ルールで決められている。



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