田舎育ちだったので子供のころは絵画展に接する機会は全くありませんでした。絵画との唯一の接点は、月刊学習雑誌の付録だった著名画家の作品のコピーです。毎月の雑誌を楽しみにしていました。
あるとき、付録の絵画に強烈な印象を受けました。ゴッホの作品です。鮮やかな黄色が印象的な「ひまわり」や、陰を感じさせる思いつめた目をした「自画像」に、小学生の私は少なからぬ影響を受けました。
そのころ、絵のうまい同級生がいました。筆先に複数の絵の具をのせ、大胆に塗り重ねていくタッチが、ゴッホによく似ていました。その筆遣いをまね、絵が下手な私が紅葉した山を描くと、なぜか写生展で入選してしまいました。
社会人になりゴッホの作品を鑑賞する機会も増えました。荒々しいタッチや際立った色彩が印象的ですが、「麦畑」「クロー平野の収穫」など農村の風景を描いた作品が好きです。田舎育ちの私にとり少年時代の懐かしい風景と重なって、癒やされるのです。
経営に携わってからは、数ある「自画像」のうち何点かを鑑賞する機会がありました。ゴッホの鋭いまなざしの奥から「お前は物事を深く思い詰めて考えているのか」と問いかけられているように感じます。私は仕事で疲れると、宇宙の始まりに思いを巡らすことがあります。ゴッホの問いかけに「宇宙の始まりの壮大なロマンを考えているよ」とうそぶいたものです。