イラン国会(一院制、定数290)選挙で反米の保守強硬派が圧勝した。指導部は多数の保守穏健派や改革派候補を事前審査で失格とし、選挙前から反米で世論を引き締める姿勢を隠さなかった。リベラル層が多い都市部では多くの市民が投票をボイコットし、投票率は1979年のイスラム革命以降で最低となる42・57%を記録。イスラム教シーア派の法学者による統治体制に対する不信感が示された。(テヘラン 佐藤貴生)
■欧米に責任転嫁
「選挙前に否定的なキャンペーンが広がった」。イランの最高指導者ハメネイ師は23日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスへの感染がイランで拡大したとの欧米メディアの報道が、投票率を下げた一因だという見方を示唆した。
しかし、首都テヘランの市民はボイコットの理由を「シーア派の統治体制を支持しない」「投票しても何も変わらない」と話し、ウイルスを懸念する声は皆無。拡大する体制批判を覆い隠す狙いがちらつく。
反米の保守強硬派は選挙で7割超の議席を獲得したもようだ。欧米に融和的なロウハニ大統領ら保守穏健派と改革派は壊滅状態に追い込まれた。次期国会でロウハニ氏への攻撃が強まるのは確実で、来年に予定される大統領選で反米保守の大統領誕生につなげる指導部の思惑がうかがえる。
■対立さらに激化
保守強硬派は革命防衛隊と反米で一致しており、結びつきも深い。テヘラン市でトップ当選したガリバフ元テヘラン市長も同隊出身で、国会議長に就任するとの見通しが強まっている。
政治評論家のレイラズ氏(57)は「統治者(ハメネイ師)は革命防衛隊に全権力を移行し始めた。保革共存では国は機能しないからだ」と分析した。